沖縄県013

風・水の家

  • 1978年竣工
  • 設計/アトリエガィィ
  • 施工/瀬長組
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造 地上2階 鉄筋コンクリートスラブ(屋上緑化)
  • 用途/住居建築
  • 所在地/沖縄県那覇市

■概要
当建物は井然型に区画された住宅街に位置する住居建築である。佐久川一、上原一、多嘉山昇、山城義男で構成するTeam Zoo ガィィの設計により1978年に竣工した。 北西-南東に通る2本の道路の間に建ち、正面を南東に向ける。

■建物の特徴
構造と形式は鉄筋コンクリート造の2階建て住宅である(一部平屋)。南北軸に対して45度傾いた矩形平面とし、矩形の対角線、即ち南北軸に対してシンメトリーな形態を持つ。北側の2辺に沿ってくの字の2階部分をのせ、南側はアマハジを持つ矩形の平屋とする。平屋部分、2階部分共に、緑化された階段状の屋根をもち、その形状は傾斜天井として内部空間に現れる。平屋部分の屋根は、建物の中心に向かって上る階段状になっており、頂部には広間の吹き抜けと階段が一体となったボリュームが突き出ており、開閉可能なハイサイドライトを設ける。このハイサイドライトは、内部の広間の採光だけでなく、階段屋根を上ってきた南風を取り込んで、2階の東西2つの塔屋に設けた高窓へと風を流すコアになり、その周囲に諸室を配する。室内の通風調節装置として伝統的な無双窓も用いられている。
さらに、当建物には「風の塔」と「風の道」が設けられた。建物中心に2本の竪シャフトを設け、床下空間や風の道をこれに接続して重力換気を促す仕掛けとなっている。風の道は外部から各室内に引き込まれた横引きシャフトである。
このように、外部から異なる経路で風を内部に取り込み、これらの流速の違いを利用して経路内で生じる減圧効果により、家全体に風の流れを創出する計画となっている。
当初は道路に面するバルコニーを花ブロックで囲っていたが、鉄筋の劣化のため、現在はアルミサッシやパイプ手すりに取替えられている。

■評価
佐久川一は、沖縄の地域性に根差した建築を追求し、蒸暑地域に適した自然素材(土壁、木質系材料、漆喰など)や雨水利用システムを取り入れたサスティナブルな建築を積極的に提案してきた建築家である。当建物はRC造の住宅建築が主流となった70年代において、都市住宅におけるプライバシー確保と通風の両立を試みる先駆的な取り組みであり、佐久川一の最初の住宅作品でもある。機器による解決に頼らず、沖縄の海洋性微風という地域特有の環境を最大限に活かすことが試みられ、自然環境に逆らわない配置計画と、中央の吹き抜けや風の道、風の塔によって、風の流れを促す独自の空間構成を生み出した。水平方向の「風の道」は、ほぼ同時期に設計された名護市庁舎にもみられるが、この設計にも佐久川一が関わっている。名護市庁舎同様、当建物の風の道も、現在は雨水の侵入や空調の普及等により機能していないが、沖縄の風を生かした建築の系譜においてその源流としての価値が見いだされる。

■現状
現在も建設当初からの所有者が居住する。所有者と設計者は高校の友人関係にある。外観の花ブロックが撤去され、また、建設当時のアルミサッシなどの工業製品は水密性が低いため、風の道や風の塔もコーキング処理による漏水対策がなされている。所有者の子息は現在は別居しているが、将来的に使い続けたいとの意向であり、必要であれば工業製品の交換で当初の姿に戻すことも可能かもしれない。