■概要
黒島研究所は、八重山諸島の一つ、黒島の西部に位置し、豊かな海とサンゴ礁に囲まれた自然環境を活かした海洋生物研究・保全拠点である。建物は平屋構造を基本とした素朴で機能的な造りで、展示室、実験室、飼育・観察施設を備え、ウミガメをはじめとする海洋生物の研究・啓発活動を行っている。また周囲は静穏で、島特有の牧歌的な景観が広がり、海からのアクセスも良く、環境教育の場としても活用されている。
■建物の特徴
黒島研究所は、建築家・清家清による設計で、1972年に建てられた。周囲の景観に溶け込む低層の建物形態が特徴である。
周囲12kmあまりの小さな離島に立地し資材輸送に制限があることから、フレームを鉄骨とする一方、屋根には鉄筋コンクリートが採用され、台風襲来に配慮されている。地上面からわずかに持ち上げた床スラブと、フラットルーフ(平らな屋根)による2枚の水平スラブが空間を構成する。壁にはコンクリートブロックが用いられており、シンプルかつ実用性を重視した構造である。花ブロック(装飾穴あきブロック)を用いたり、また、大きな開口部や縁側的な回廊を設け、内外の連続性を意識した空間構成となっていてる。屋根や外壁の素材には、周囲の自然と調和する色彩・質感が選ばれ、環境に馴染む外観を実現している。
■評価
<作家性>清家清は、日本を代表する建築家の一人で、モダニズム建築を基盤にしながらも、日本的な空間の感覚や自然との調和を重視した設計で知られる。規則的なモジュールやグリッドを用いることで、秩序と柔軟性を両立させ、これにより、空間の拡張や変更が容易になり、住宅から大規模建築まで幅広く応用できる設計手法を確立した。黒島研究所でもこうした設計手法が用いられ、合理的な構成による機能的な空間を沖縄の風土と調和させている。1991年には、実際に空間の拡張(増築)が行われた。
■現状
黒島研究所は、主にウミガメ(アオウミガメ、アカウミガメなど)およびサンゴ、他の海洋生物の調査・研究を行っており、過去には国内初のタイマイ(ハシビロウミガメ)の産卵確認なども記録。
研究成果を一般にも公開するために、標本や剥製、生物飼育展示、地域の民具・資料展示などを伴う小さな「水族館+博物館」的な施設として機能しており、観光スポットにもなっている。
文責:大浜義喜