■概要
野石積みの家は、赤嶺和雄(設計同人GAN)が自邸として設計した住宅建築である。フクギに取り囲まれた800㎡を超える敷地は代々受け継がれてきたもので、以前は伝統的な民家が建っていた。県外で建築を学んだ設計者は、沖縄建築に対する理解を深めるため、沖縄本島と離島の集落をたびたび歩いて回った。その際、集落の道の両端に続く石垣が生むコントラストに魅せられ、沖縄の石造文化を生かした建築を模索したが、その思想を初めて表現したのが1981年に竣工したこの自邸である。
■建築の特徴
鉄筋コンクリート造平屋建てで、建築面積229.31㎡、約5坪の2階部分がある。敷地中央にあって信仰の対象でもある井戸の周囲を中庭とし、それを各室が取り囲む回遊式の平面計画となっている。北側に玄関、南側に寝室、西側に和室とアトリエ、東側にキッチンとリビング・ダイニング、老人室を配している。外壁と室内の壁ともに琉球石灰岩の野石を積む。外壁には内転びにテーパーがつき、出隅が曲面に積まれている部分もあり、城(グスク)を思わせる佇まいとなっている。
■評価
沖縄の石造建築文化を現代建築に生かした好例である。石造建築文化を後世に伝えるための実験的な作品であり、当時の建築関係者に大きな影響を与えた。敷地外周の石垣と建物正面のヒンプン、井戸などは沖縄の伝統的集落には欠かせない構成要素だが、以前からあるこうした構成要素をそのまま活用し、地域の景観保全にも寄与している。
■現状
現在、赤嶺氏ご夫婦が住まわれているが、アトリエは使っておらずアトリエ廻りの廊下とともに物置としている。畳間は客人を招く空間として現在も活用されている。様々な作家の作品が飾られた畳間からは半戸外の縁側を介し、庭の眺望を一体的に楽しむことができる。時を経て敷地を取り囲む植栽が見事に茂っており、沖縄の原風景であるフクギに囲まれた集落のような印象をも抱かせる外観である。