■概要
石垣市民会館は、石垣島南海岸の埋め立て地に位置し、周辺には図書館や公園がある。日本最南端の市民会館であり、島内唯一の大規模な劇場ホールである。「詩の国、歌の島、踊りの里」といわれる八重山の文化拠点として市民の強い要望を受け、昭和59年10月に着工、昭和60年に竣工した。
■特徴
大ホール棟と中ホール棟で構成された鉄筋コンクリート造2階建ての建物である。南方型建築の特徴の一つである分棟式で、2つの棟を雁行に配し、その間を半屋外空間(ピロティ)の廊下でつなぐ。ホールへ向かう人々を迎え入れるピロティには風が通り、上部に架けられたコンクリートパーゴラが日差しを和らげ、賑わいのポテンシャルの高いスペースとなっている。ピロティのコンクリート庇とパーゴラによって構成される水平性と、巨大なホールの外壁のコントラストが特徴的な建物である。ホールの外壁面には、海風からコンクリートを保護するため「打ち込みタイル法」が採用されており、琉球赤瓦を思わせる色合いに仕上がっている。また、コンクリートの柱や梁にあしらったレリーフなど、内外のディテールには風土が培ったさまざまな風俗やデザインのモチーフが織り込まれ、地場産の素材が多用されて、親しみのある建物となっている。
■評価
前川國男はル・コルビュジエ、アントニン・レーモンドの元で学び、モダニズム建築の旗手として、第二次世界大戦後の日本建築界をリードした建築家である。生涯にわたり「鉄筋コンクリート造の本格的な公共建築」をテーマとして、「日本相互銀行砂町支店(1961)」「東京都美術館(1975)」「国立国会図書館(1986)」等数多くの公共建築を手がけ、「一筆書き」「打ち込みタイル法」といった設計手法や工法を考案した。当建物は、前川が生前最後に手がけた作品のひとつで、近代建築の理念や師ル・コルビュジェの教えを昇華して「建築は人間が生きるための場所である」という原点に回帰した後年の設計思想をよく表す作品である。また、日本最南端かつ、沖縄県内で唯一の前川作品である。
■現状
石垣市が管理・運営し、八重山諸島の郷土芸能や音楽・文化・イベントの場として、市民に愛され親しまれている。2008年には桑田佳祐 アコースティックライブ in 石垣島を行うなど、様々な芸能人達のイベントも開催されている。
文責:大浜義喜