沖縄県026

那覇市立石嶺中学校

  • 1988年竣工
  • 設計/末吉栄三計画研究室(末吉栄三)
  • 施工/大晋建設株式会社 金秀建設株式会社 株式会社三洋建設 株式会社下地建設
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造、鉄筋コンクリートブロック造、鉄骨造 地上4階 沖縄産瓦重ね葺き
  • 用途/学校建築
  • 所在地/沖縄県那覇市首里石嶺町

■概要
当建物は、那覇市特有の小刻みな起伏を有する岳陵地に位置する。敷地面積20,807㎡、延床面積9,463㎡の規模を有する学校建築で、1986年11月に起工し、1988年3月に竣工した。設計は沖縄県内の学校建築を数多く手掛け、地域建築の発展に多大な貢献を果たした末吉栄三による。当建物は、1989年に文教施設協会賞、及び、第30回BCS賞、1991年に第3回公共建築賞を受賞するなど、全国的にも高く評価された。

■建物の特徴
鉄筋コンクリート造の本館は、地下1階、地上4階建てで、屋上にはプールや庭園が配されている。沖縄の中学校で初めてオープンスクール形式を導入し、「沖縄型オープンスクール」の嚆矢となった。教室は半オープン形式をとり、廊下との間を棚や腰壁を用いてゆるやかに仕切る。また、半屋外空間の中庭や吹き抜け、共有スペースを各所に設け、生徒同士の活発なコミュニケーションを誘発する空間装置としている。内装や共有部には、木製の手摺りやベンチが多用されており、コンクリートの質感に対する視覚的・触覚的なアクセントとなっている。屋内運動場は鉄骨造のドーム屋根を持ち、その特異な形状から「UFO体育館」と呼ばれ親しまれている。3箇所ある校門から校舎へと続くアプローチには、自然石や既存の樹木が効果的に配置され、周辺の地形を生かした造園計画がなされている。

■評価
当建物は、沖縄の気候風土、文化、地域産業を総合的に読み解き、学校建築へと昇華させた末吉栄三の代表作である。機能性と工費重視から画一的になりがちな学校建築において、沖縄の起伏に富んだ地形に即した配置計画や、半屋外空間による包摂性の実現によって、生徒が愛着をもって過ごすことができ、地域社会にも開かれた建物となっている。単なる教育施設という枠組みを超えた地域建築の在り方を示している。当建物によって「沖縄型オープンスクール」が導入されたことで、沖縄の教育空間にパラダイムシフトを生じさせた意義は大きい。従来型教室の閉鎖性を排し、中庭や共有部を介して生徒同士の交友を促す設計は、建築が教育理念を牽引し、新たな空間性を示した好例である。竣工から35年以上が経過した現在においてもオープンスクール形式の空間が色あせることなく維持されていることが、当建物の先駆性とその設計思想の本質を裏付けている。

■現状
1992年2階のピロティー部分にコンピューター室を増築している。竣工当初全館空調を採用していたがメンテナンス性や実用性を踏まえ、個別空調方式に変更された。2026年で38期を迎える当建物は、経年による老朽化がみられ、特に木製部分の劣化が顕著である。現在は、危険個所を一部立ち入り禁止とする対策が取られているが、近年中の大規模改修工事を計画中である。