電力
発電所
P006

有峰第三発電所

  • Arimine No. 3 Power Station
  • 所在地/富山県富山市(小口川)
  • 構造形式/ダム式発電,最大出力20,000kW、小口川ダム:重力式コンクリートダム、堤頂長245.0m、堤高72.0m/発電所:地下式、幅14.6m、高さ20.8m、長さ30.0m
  • 事業者/北陸電力
  • 着工/竣工年月/1978.11/1981.5(発電開始)
  • 設計者/北陸電力
  • 施工者/前田建設工業,真柄建設
  • 所有者/北陸電力
  • 受賞/文化財/ -

建設経緯

常願寺川水系の電源開発は、1923(大正12)年に発電を開始した越中電力の亀谷発電所(9,900kW)を嚆矢とするが、その豊富な水力に着目していた富山県は、県営事業として電源開発を行い、1924(大正13)年に中地山(建設当時2,300kW)、松ノ木(建設当時5,400kW)、上滝(建設当時8,600kW)の発電所を完成させた。さらに高さ110mの有峰ダムを建設し、下流に4つの発電所を設けて、約5万kWを発電する計画を立て、1937(昭和12)年にダム建設に着手した。しかし、電力統制により富山県から日本発送電に移管され、1943(昭和18)年には戦局の悪化により工事が中止された。進捗率は31%であった。

1951(昭和26)年に北陸電力が設立されると、戦後の経済成長に伴う電力需要の増大に対処するため、1956(昭和31)年に「常願寺川有峰発電計画」(JAP)が策定された。その計画は、建設途中であった有峰ダムを高さ140m、堤長500mに拡大し、7つの発電所を建設し、267,600kWを発電するもので、1960(昭和35)年に完成した。

その後、1977(昭和52)年にはピーク供給力を増強するため、既設の有峰ダムを有効活用する再開発が計画された。それは有峰ダムに新たに取水口を設けて、毎秒74m3を取水し、総延長約12kmの導水路で有峰ダムと小俣ダムとの落差約750mを利用するもので、有峰ダムの下流和田川の左岸に有峰第一発電所(建設当初26万kW)を、その放水を小口川に導水して有峰第二発電所(建設当初12万kW)を、さらに小口川ダム(小口川調整池)を建設して有峰第三発電所(2万kW)を設け、1981(昭和56)年には合計40万kWの発電を開始した。

施設概要

小口川に建設された小口川ダムは、既設の小俣調整池からの放水量を従来通りとするために、有効貯水容量150万m3とし、高さ72m、堤頂長245mの重力式コンクリートダムとされた。

小口川ダムの直下流に設けられた有峰第三発電所は、周辺の地形、地質、経済性、保守管理等の条件から北陸電力としては初の全地下式発電所が採用された。地下空洞は、幅14.6m、高さ20.8m、長さ30.0mで掘削量は約0.7万m3であった。有効落差は92.0m、使用水量は26.0m3/s、水圧管路は長さ222.3mである。

戦後土木施設としての特徴・評価

従来のわが国の地下式発電所は、ほとんどがキノコ型であったが、岩盤力学、施工技術の進歩によりロックボルトや吹付けコンクリートの信頼性が向上したこと、建設地点の岩盤が比較的良好であることから、わが国で初めて発電所にNATM工法を採用するとともに断面形状をタマゴ型とした。NATM工法を採用したことにより、コンクリート覆工を行わず吹付けとしたため、工期と工費が縮減された。設置された横軸2万kWのフランシス形水車は、当時としてはわが国最大級の横軸水車であった。(樋口輝久)

-参考文献-

1) 高瀬博,小野朝男:有峰第1,2,3発電所開発計画の概要,発電水力,No.160,pp.19-30,1979.

2) 高瀬博,小野朝男,稲本嶢,金山善立:有峰第三発電所 地下発電所の設計と施工,発電水力,No.168,pp.58-68,1980.

3) 北陸電力株式会社土木計画課:常願寺川水力開発の歴史,発電水力,No.229,pp.111-123,1990.

4) 水力技術百年史編纂委員会:水力技術百年史,電力土木技術協会,pp.758-759,1992.