電力
発電所
P013

新成羽川発電所

  • Shin-Nariwagawa Power Station
  • 所在地/岡山県高梁市
  • 構造形式/ダム式発電:最大出力303,000kW 新成羽川ダム:重力式アーチダム、堤長289m、堤高103m
  • 事業者/中国電力
  • 着工/竣工年月/1964.8/1968.7(1号機)、1968.10(2号機)、1969.8(3号機)、1969.11(4号機)(発電開始)
  • 設計者/中国電力
  • 施工者/新成羽川ダム:前田建設工業/発電所:熊谷組
  • 所有者/中国電力
  • 受賞/文化財/ -

建設経緯

成羽川は、広島県と島根県の県境に位置する道後山を源に、途中、帝釈川などを合流し、岡山県高梁市で1級河川の高梁川に注ぐ流域面積950km2の河川である。古くから電源開発が行われ、1903(明治36)年に笠神発電所(360kW)、1905(明治38)年に井川発電所(510kW)、1924(大正13)年に帝釈川ダムを有する帝釈川発電所(4,400kW)、1928(昭和3)年に成羽川発電所(12,900kW)が建設された。  新成羽川発電所の計画は、1957(昭和32)年に通産省が実施した第4次包蔵水力調査により有望な地点として取り上げられたことに始まり、既設の成羽川発電所を廃止して、ドーム型のアーチ式ダムを築造するものとし、新成羽川第一発電所(64,600kW)、新成羽川第二発電所(12,200kW)が計画された。しかし、この案では第二地点の勾配が緩いため、調整池を持つ黒鳥(3,500kW)、佐原(7,000kW)に分割して、計画が進められた。

一方、岡山県は高梁川河口部に広がる水島コンビナートの発展に伴い、工業用水の確保を企画していたが、これが中国電力の発電計画と両立できることから、新成羽川ダムは、岡山県と中国電力による共同開発となった。そこで1960(昭和35)年に新成羽川地点(65,600kW)を地下式とし、第二地点の用瀬(4,400kW)を逆調整池とする案が計画された。その後、冬期の有効電力が極端に低下する傾向があるため、年間を通じて安定した供給が出来るよう、混合揚水式発電へと計画が変更された。そして1962(昭和37)年12月に、最終的に新成羽川ダムにダム式の新成羽川発電所(303,000kW)を設け、その直下に揚水用下池として田原ダムによる田原調整池と田原発電所(22,000kW)、さらにその下流に黒鳥調整池と黒鳥発電所(2,200kW)を設置する案に決定した。当時としては、わが国屈指の混合揚水式発電所で、西日本で最大の水力発電所であった。

いずれも1964(昭和39)年8月に工事に着手し、新成羽川発電所が1968(昭和43)年5月に通水、1~4号機が1968(昭和43)年7月~1969(昭和44)年11月に発電を開始した。田原発電所と黒鳥発電所は、1968(昭和43)年6月に通水し、同年7月に発電を開始した。

施設概要

当初はダム水路式発電で、取水口や発電所はダムの影響が及ばない離れた場所に計画されており、ダムは独立して設計できること、谷の形状がV字型で地盤も堅固なため、経済性を考慮し、薄肉ドーム型アーチダムが計画された。しかし、大規模な揚水式発電に変更されたため、水路や発電所の設計・施工を考慮して、発電方式、ダム型式を再検討する必要性が生じた。発電所は、発電専用水車1台、発電揚水兼用の可逆水車3台を設置するため、建屋は縦90m、横44m、高さ42mの大きさとなることから、発電所をダム直下に設けるダム式発電に変更された。そして発電所がダム直下を横断して設けられるため、洪水処理に有利な重力式ダムと経済的なアーチ式ダムの両方を兼ね備えた重力式アーチダムが採用され、発電所の屋根を余水吐のエプロンとして兼用した。そのため、計画洪水時流量2,400m3/sが、幅60m、長さ38mの屋根上を流速35m/sで流れても十分安全な設計がなされている。

戦後土木施設としての特徴・評価

重力式アーチダムは、フーバーダム(1936年)に代表されるように、戦前からアメリカで数多く採用されていた形式であるが、わが国では1960年代から70年代前半にかけて9基が築造された。その中で新成羽川ダムは、堤高103.0m、堤長289.0mで最も高いものである。また、発電所の屋根を洪水時にダム越流水のエプロンとして使用した珍しい形式でもある。

1307(徳治2)年に成羽川の航路開削の経緯を岩に刻んだ国指定史跡「笠神の文字岩」が田原調整池内に沈むことから、原寸大のレプリカが作成された。(樋口輝久)

-参考文献-

1) 村田清逸:新成羽川発電所開発計画の立案から決定まで,発電水力,No.72,pp.24-34,1964.

2) 村田清逸:新成羽川発電所のダムの設計と工事施坪計画,発電水力,No.82,pp.11-29,1966.

3) 中国電力株式会社:新成羽川系発電所 土木工事記録,1969.