







新榛名変電所の建設工事は、群馬県の水力発電所から275kVの電力を受電し、500kVに昇圧して東京の西部方面に送電するプロジェクトとして、1979年1月に始まった。この変電所の敷地面積は約20万m2で、群馬県の榛名山北側斜面に位置している。榛名山麓は火山灰地質のため、地盤の安定性を確保する必要があり、使用する材料が地盤に定着することが試験により確認されている。
特に、工事完了直後に機器を据え付けるエリアには速効性のあるセメント改良材を使用して安定処理を施し、将来増設を計画していたエリアにはサンドドレーン工法を用いて地下水や雨水を効率的に排水し、地盤の安定化を図っており、これらの技術は、その後の大型変電所建設でも採用されている。
変電所工事では450km³の切土が発生し、付帯工事では調整池や750mの構外排水路も建設された。また、変圧器や機材などは山間部を約5kmにわたって輸送する必要があったため、搬入道路の工事の進め方については地元関係者との協定書が交わされ、第1工区(2.47km)、第2工区(1.73km)、第3工区(0.9km)に分けて申請、施工がされている。
運転開始時の500kV/275kV主変圧器は1台で、その後、新たに2台が増設されている。変電所の500kV主母線には気中絶縁の大口径アルミ導体が使用され、主母線に接続する開閉装置はGIS(ガス絶縁開閉装置)と遮断器、断路器、接地装置などが設置されている。500kVガス遮断器のブッシングには据え付け時期の違いにより磁器製およびポリマー製が適用されている。気中絶縁タイプの500kV遮断器は圧縮空気により操作されるため、専用のコンプレッサ設備が変電所に配置されている。
新榛名変電所の北西には、500kVから1,000kVへの送電計画が計画されていた1990年代に変電機器の実用性能を検証するための設備が設置されている。
東京電力は、増加が予想される首都圏の電力需要に対し、遠隔地で発電された電力を安定的に送電し、送電線ルート数の削減と送電時の損失低減を図る効率的な送電方式として、1,000kV送電の計画を進めていた。1970年代には、学識経験者、電力会社、電力中央研究所および関係メーカーなどによる研究により実用化の目途がつき始めていたが、1,000kV送電は世界的にも実績が少なく、わが国特有の条件(山岳地での建設、機器輸送、耐震など)を解決しながら技術を確立していく必要があった。
このような課題に対し、実用状態に近い条件で1,000 kV変電所を構成する機器の適性を検証するための設備が新榛名変電所内に設置され、1996年から長期通電試験などが実施された。1,000kV変電所としての最小ユニットを構成するため、変圧器1台(3相)、GIS1回線(3相)が据え付けられ、2005年頃には実用可能な水準までの検証が進められた。変圧器の定格容量は1相で1,000MVAとなるため、鉄道輸送の限界を考慮し、2分割構成で輸送されている。
実用性能検証により得られた技術や知見は、500kV以下の変電所設備の信頼性向上、設計合理化、保全高度化にも反映されている。また、海外での1,000kV送電に向けた技術コンサルティングや、IEC(国際電気標準会議)の規格にも反映され、変電技術の発展と国際標準化に大きく貢献した。この取り組みにより、2021年2月に電気学会「でんきの礎」を受賞している。(稲葉正明)
1) 東京電力パワーグリッド株式会社:拓け、“超々高電圧”送電の新時代!100万ボルト変電機器の開発&実証試験が「でんきの礎」顕彰を受賞、2021、東京電力報、https://www.tepco.co.jp/toudenhou/pg/1592625_9043.html
2) 山形芳文:100万V変電機器の開発はここまで進んだ、電学論B、115巻 11号、pp.1276-1283、1995
3) 磯崎正則:100万ボルト送電線の技術開発、電学論B、128巻11号、pp.1300-1303、2008