







首都圏の電力は外周地域の500kV変電所を拠点として、都心部に向かう275kVの送電系統によって供給されてきたが、都心部の堅調な電力需要の伸びを想定し、長期的な安定供給を図るため、効率よく大容量の電力を供給することが可能となる都心部の500kV変電所が計画され、新豊洲変電所の建設工事が1993年に開始された。
新豊洲変電所は東京都の豊洲・晴海開発整備計画地区に建設された直径約140m、地下深さ70mの円筒形鉄骨鉄筋コンクリート構造で、建物容積は43万m3の規模である。約20か月におよぶ山留壁の施工後、掘削工事、建物、躯体工事、変電設備の工事が進められ、2000年に竣工した世界初の地下式の500kV変電所である(図1)。
地下の山留壁は深度により二つの部分に分けられ、上部(深さ0~44m)の壁厚は2.4m、下部(深さ44~70m)の止水壁部は1.2mの変断面で構築されている。山留壁の長さは深さ約70mで、固結シルト層(上総層群)に2m根入れし、地盤アンカーは約320本が埋め込まれている。地下部分の遮水壁は地下水の流入を防止するように設計し、周辺地下水位への影響がないことが検証されている。
円筒形の建物は扇形に3分割され、それぞれの分割区域に機器が配置されている。地下4階には最重量機器の500kV変圧器、275kV変圧器、500kV分路リアクトルが設置され、地下3階にはケーブル処理室、地下2階に開閉装置および、冷却塔が設置されている。大型変圧器は、地上のマシンハッチからクレーンで地下4階に下ろされ、エアパレットにより横移動し、±3mmの精度で本体ベースに据え付けられている。
新豊洲変電所の500kV系統は地中送電線により千葉県の新京葉変電所に接続している。地中送電ケーブルのルートとして立坑を構築し、変電所の躯体にはケーブル貫通用スリーブが設けられ、山留壁部はコア抜きで穴を貫通させている。
周囲環境との調和を図るために、変電機器の運転・操作時の発生音を減音させる消音器や吸音材が設置されており、3カ所の大型排気塔は地上の変電所建物から離れた位置に設置して、建物周辺への影響が少なくなるように配慮されている。変電所の内部で万が一火災が発生した場合、放水による消火では復旧に時間がかかるため、不活性ガス等による消火設備が配置されている。
新豊洲変電所の建物を円筒形とすることにより、矩形に比べて掘削時の土留の量を大幅に削減し、工期も短縮することが可能になった。500kV変圧器(容量1,500MVA)は大型器となるため、都心部の輸送条件をクリヤーするために12分割にして輸送され、到着後に地下変電所の変圧器室で防塵管理をしながら組み立てられている。
また、500kVガス絶縁開閉装置には縦型の遮断器が適用されているが輸送中は安全確保のために横置きとなっており、地下2階の開閉器室に到着後、地下変電所での据付け工事用に考案された起立装置(荷重仕様7トン)を用いて、500kVガス絶縁開閉装置に組み込まれている。
新豊洲変電所と新京葉変電所(千葉県)を結ぶ長さ約40kmの500kV地中送電線には世界で初めてとなる500kVのCVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル)が採用された。長距離線路であるため、設計・施工においてはケーブルの細線化、接続部のコンパクト化、長尺ケーブル布設における新工法の開発・採用等が行われ、高い絶縁性能と信頼性の向上を達成することができた。CVケーブルは絶縁油を使用しないため、保守管理が容易になり、環境への影響も少なく、防災性も向上している。(稲葉正明)
1) 東京電力株式会社:50万ボルトの「新豊洲変電所」および「新豊洲線」の完成について、2000年11月21日、https://www.tepco.co.jp/cc/press/00112101-j.html
2) 東京電力パワーグリッド株式会社:50万ボルト地下式新豊洲変電所パンフレット、2024