


経済成長に伴う電力需要の増加対策の一環として、各電力会社の系統間の連系が進められ、関西電力(当時)と四国電力(当時)間の系統連系として、電源開発(当時)と上記2社で紀伊水道直流連系設備が建設された。
これは、徳島県阿南市に四国電力と電源開発が建設した橘湾火力発電所(総出力280万kW)の電力の一部を関西電力に送電するため紀伊水道を海底ケーブルで最短に横断するルートとして建設された(四国電力の阿南変換所から関西電力の由良開閉所経由、同紀北変換所までの全長約100kmの直流送電ルート)。
送電電圧(直流)は±25万V、送電容量は140万kWである。直流主回路構成は、双極1回線導体帰路方式。海底ケーブルは通常の3条構成(本線2条、帰線1条)に帰線1条を加えた4条構成としており、片極停止が双極に波及しない極独立構成である。2つの極はそれぞれ独立した極制御装置を持ち、一方の極の制御装置の故障時も他方の極は影響を受けない。
阿南変換所:引出回線 直流±250kV、双極1回線、交流500kV4回線
紀北変換所:引出回線 直流±250kV、双極1回線、交流500kV6回線
阿南紀北直流幹線 亘長 地中・海底ケーブル48.9km、架空線50.7km
両変換所の主要設備は、サイリスタバルブ、変換用変圧器、調相用変圧器、電力用コンデンサ、交流フィルタである。
紀伊水道直流連系設備は、建設当時、直流50万Vへの昇圧を計画しており、全ての設備はこれを前提に開発された。以下に主要設備に適用した新技術を紹介する。
・ 世界初の大容量光直接点弧サイリスタ素子と大容量サイリスタバルブの開発
前述の直流50万V昇圧計画のため、交直変換の要となるサイリスタバルブのコスト低減、コンパクト化、高い信頼性の実現を目指し、従来の素子(4インチ、6kV、2500A)に替え、世界初の新たな光直接点弧サイリスタ素子(6インチ、8kV、3500A)、及び、この素子を適用した50万Vバルブが開発された。
・世界初の50万V直流GIS(ガス絶縁開閉装置)の開発
沿海部に近い阿南変換所と由良開閉所では、耐塩設計上、充電部を最小化し、また、狭い土地に設置するためにコンバクトにすることが必要となった。このため、世界初の50万V直流GISが開発された。
・直流運転継続制御装置の開発
交流系統事故時の対応として、従来の直流送電では、サイリスタバルブを一旦停止し、交流電圧回復後に再起動させていた。これに対し、デジタル技術の最大限の活用により、交流系統事故時の急激な電圧変動を高速・高精度に検出し、制御演算処理を行い、高速でサイリスタバルブの点弧制御を行うとともに、サイリスタバルブの実余裕角を直接検出し、点弧位相制御に反映するという新しい制御ロジックを付加して、交流系統事故時の直接運転が継続できる制御装置が開発された。
以上から、同設備は世界的に最大級の大容量直流送電であり、世界初の機器を開発し、コスト低減、信頼性向上を実現したものとして評価できる。(山本正純)
1) 橋本隆輝:紀伊水道直流連系設備の概要、パワーエレクトロニクス研究会論文誌、Vol.25、No.1、1999.10
2) 関西電力プレスリリース:紀伊水道直流連系設備の運用開始について、2000.6.22 紀伊水道直流連系設備