奈良県001

大和文華館

  • 1960年竣工
  • 設計/吉田五十八建築研究室
  • 施工/大林組
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造地上2階地下1階建、寄棟造
  • 用途/文化施設
  • 所在地/奈良県奈良市

大和文華館は、奈良と大阪を結ぶ近鉄奈良線の学園前駅に近い閑静な住宅街に所在し、近代化を進めつつも日本的な要素を取り込んだ吉田五十八が設計した東洋美術を中心とした私設美術館である。初代館長の矢代幸雄の思いもあり、広大な自然のなかに建ち、自然との調和を重視した豊かな環境を造り出している。水平な外観やピロティーなどは近代的建築の要素であるが、塗りこめられた垂木、なまこ壁や虫籠窓など、歴史的なモチーフが用いられ、全体に日本的なものを感じさせる。外壁の素材の組み合わせや、なまこ壁の目地漆喰を外枠とし内側にサッシを入れ開口とするなど細部まで美しく納めている。中に入ると広いロビーが目の前に広がり展示室へとつながる。展示室の真ん中に竹が植えられた中庭があり、閉鎖的な美術館の空間に自然とつながる日本的な空間をもちこんでいる点も評価できる。
50周年を機に行われた2010年の改修では耐震改修なども含まれたが当初を踏襲した。作品の展示と平行して講堂では文化講座や講演会、地域の大学による演奏会などが催され、奈良を代表する美術館建築として長く親しまれ多くの人が訪れている。

受賞歴等/BCS賞・BELCA賞・耐震改修優秀建築賞