戦後広島の復興を象徴する丹下健三設計による広島平和記念資料館と、村野藤吾設計の世界平和記念聖堂を嚆矢として、これまで数々の戦後建造物が重要文化財に指定されてきました。それらを概観すると、上記2件の他、ル・コルビュジエ作品として世界文化遺産にも登録されている国立西洋美術館に代表されるモダニズム建築だけでなく、戦後日本に相応しい神社建築を目指した明治神宮や、伝統意匠と現代建築の統合を目指した堀口捨己の理念を体現した八勝館「御幸の間」などの和風建築、さらには風景と調和する防災施設として建設された紅葉谷川庭園砂防施設や戦後長大橋の出発点である西海橋など、多岐にわたる建造物が対象となっています。
登録有形文化財でも、戦後建造物が幅広く扱われており、令和3年3月時点でその数は550件超にのぼります。その中には、戦後復興のシンボルである東京タワー、日本万国博覧会(大阪万博)会場に聳え立つ岡本太郎の代表作の一つ太陽の塔、公団住宅の初期の姿を伝える旧赤羽台団地、本格的な工業化住宅の国産第一号であるセキスイハウスA型、メタボリズム建築の集大成の一つ東光園など、戦後日本の歩みを物語る近現代の建造物が数多く含まれています。