奈良県006

薬師寺西塔

  • 1981年竣工
  • 設計/薬師寺西塔設計委員会(浅野清)
  • 施工/西岡常一
  • 構造形式/木造、三重三間塔婆、毎重裳階付、宝形造本瓦葺
  • 用途/宗教建築
  • 所在地/奈良県奈良市

薬師寺西塔は、宮大工西岡常一棟梁の指導により、約3年の工期、10億円の工費をかけて昭和55年に再建された。1300年の時を経ている東塔から伝統的構法を学び、経年で実証された優点を継承するとともに、補うべき点については現代の優れた材料と工法を導入した超長期型耐久建造物である。
具体的には、各層の開口部(連子格子)や三層目の本建(裳階建部と本建部がある為)軒出寸法を創建時のものとした。最高高さは法隆寺五重塔より約2m高い。基準尺は天平尺(1尺=294~297mm)を使用している。建築外周部は100~200年で30cm位下るので、各軒先は6cm上げて施工している。斗栱は小口が正面を向き上・下材軸方向に組立て強度、耐久性に配慮している。漆喰仕上壁部分は木小舞下地で厚12cm。連子格子部の内側板壁厚は21cm。奈良時代の角型頭の和釘は垂木止め、長押止めに6000本使用し、垂木は反り加工を施している。また、本瓦葺の瓦材は1150℃焼成品を、木部塗装の丹土は目の粗いものが上質で岡山産を使用している。また、更なる耐久性向上を図るため、次の5つの現代の材料と工法を導入した。第1は心礎と心柱間のディテール、第2は屋内の四隅柱下にSRC地中梁(耐候性H形鋼)と杭打を設けたこと、第3は1階の柱底面と礎石の間にSUS製ダボと金属プレートを挿入したこと、第4は本瓦葺を空葺とし平瓦をSUSスクリュー釘、丸瓦を銅線で止めたこと、第5は隅斗栱を一木(紅桧)から造り出したことである。このように創建時の意匠・構造を研究し、それを再建に活かすと共に、現代の知見を取り入れた本建物は、奈良に渡来した木造三重塔を未来へ継承する意義が込められている。