香川県001

香川県立石田高等学校

  • 1961年竣工
  • 設計/大江宏建築事務所
  • 施工/寒川工務店
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造 地上2階
  • 用途/学校建築
  • 所在地/香川県さぬき市寒川町石田東

さぬき市のほぼ中央、さぬき東街道(通称長尾バイパス)北沿いに位置し、近隣にはさぬき市寒川庁舎やさぬき市民病院がある。さぬき東街道は開通が新しく、竣工時は北側の長尾街道からアクセスする田園の中に佇む農業高校の校舎であった。
昭和35(1960)年の設計であることが確認できるが、当時香川県ではこの他にも丸亀高等学校、三豊工業高等学校などの校舎の設計を大江宏建築事務所に依頼しており、木造校舎から鉄筋コンクリート造校舎への建て替えのプロトタイプとして計画されたもののひとつである。敷地南側に中庭を介して東西に長い校舎棟が2棟が配置されている。校舎棟の北側に渡り廊下を介して管理棟があり、敷地北側には運動場や農業高校らしく実習棟、温室などが配置されている。鉄筋コンクリート造2階建てで、教室は9mスパン、階段、トイレなどは4.5mスパンで構成されている。屋根は4.5mスパンのシェル構造がリズミカルに繰り返されている。1階はコンクリート打放、2階はリシンかき落としの外壁仕上げ、開口部の腰壁は煉瓦ブロック積みとしている。
9期に渡る増築により現校舎のかたちが完成するが、3期以降は1,2期のデザインに基いて香川県建築課により設計されたものである。その後外壁や防水の改修、耐震改修、水廻りの改修などが行われている。特に2階の天井は当初木毛版打ち込みシェル構造のあらわしであったのだが、教室への空調設備設置時に断熱性能を確保するため、フラット天井となっている。
法政大学をはじめ数々の学校建築を設計している大江宏氏の特徴がいくつかみてとれる。
ひとつはシュル構造の屋根である。大屋根ではなく4.5mスパンのシェルが反復することで、田園に軽やかな風景の要素を加えている。ふたつめは円柱である。校舎棟では北面に4.5mピッチで配置し、南面には9mスパンの中央に配置しており、均質になりがちな校舎の表情にリズムが生まれている。管理棟でも各面中央のスパンを方形柱とし両端2スパンを丸柱としており表情に変化が生まれている。そして中庭である。段差を設けてその仕上げを変え、見通し良く植栽を配置している。授業以外でも生徒や教師がコミュニケーションを図ることができる空間である。調査日に生徒たちが植栽の選定をしている光景が焼き付いている。また管理棟では農作物の直売を行っていた。さらに長く愛される校舎であってほしい。