鹿児島県001

本坊酒造 津貫蒸溜所

  • 1947年竣工
  • 構造形式/貯蔵庫:石造 平屋、蒸溜塔:鉄骨造 地上7階 桟瓦葺および鉄板葺
  • 用途/産業施設
  • 所在地/鹿児島県南さつま市津貫6594

薩摩半島南西部に位置する南さつま市加世田。その中心部から南へ約9㎞の良質な水源地にも恵まれた津貫に焼酎生産のための施設群が広がる。
明治42年(1909年)本坊兄弟商会が旧式焼酎免許を取得し製造を開始。第二次大戦中、航空隊の燃料として高濃度アルコールを生産していたため、昭和20年(1945年)に空襲を受け2週間燃え続け工場は全焼した。工場は復旧再建され昭和22年(1947年)12月6日に落成した。物資調達困難な時代であり、自ら製材所を開設して所有する山林や購入した木材を自家製材し、社員である石工・大工・左官等の職人が工事にあたった。
【鉄骨造蒸溜塔】当時の日本では最新・最先端技術による焼酎製造のための連続式蒸留機の構造に合わせ建設された鉄骨造7階建ての建物で、昭和31年(1956年)に完成した。山形鋼をリベット接合したトラス材で柱・梁を構成している。1970年代前半まで、焼酎の大量生産を支え続けた蒸留装置が堂々たる威容を誇る内部は現在、展示スペースとして公開されている。鋼板張りに改修された外壁・屋根の塔状建物は、地域のシンボル的存在として観光資源にもなっている。近年、ウィスキー蒸留が開始され、外観の塗装が一新されている。
【石造貯蔵庫】工場内には昭和22年(1947年)に復旧再建された12棟の石蔵があり、樽や甕の貯蔵庫として活用されている。石積壁の内側の壁面には木柱が並び、キングポストトラスの小屋組みにより桟瓦の屋根を支え、内部に柱のない大空間を作り出している。トラス材には古材や寸法の不揃いの木材もあり、当時の資材調達の苦労がうかがえる。石造の外観は戦後の近現代建築とは考えにくいが、鹿児島ならではの戦後の復興建築として位置づけられる。また同様な事例として、鹿児島市内には戦後の復興建築として、昭和21年(1946年)に名山町3番街区に建てられた木造2階建て長屋の引揚者住宅の街区がほぼ残存している。