ふれあいプラザ「なのはな館」は鹿児島県高齢者交流センターとして1998年にオープンした公共建築である。設計者選定は県内設計事務所間でのコンペにより「高﨑正治都市建築設計事務所」が選ばれた。用途は高齢者との交流のための研修施設で、南側は多目的ホール・視聴覚・研修室・陶芸・茶室・工芸・調理とそれらを取り巻く事務管理で本館を形成し、北側には健康増進施設(温浴・プール)を核に研修のための宿泊棟が並び、それらを「交流のみち」で結ぶ焦点には「メビウス交流広場」「出会いの交流広場」が大きな天蓋の下に設けられている。南側広場には「体育館」「屋内多目的広場(旧ゲートボール場)」「野外ステージ」が配置され、建築周囲には遊歩道が巡りその結節点には「太陽の園亭」「月の園亭」といったモニュメント的な空間が置かれ、来訪者は魅力的な外部空間を楽しみ「メビウス交流広場」へ導かれる。高崎正治が創造した多様な独特のフォルムが人々を迎え、そして大屋根の下に二重螺旋のスロープがある「メビウス交流広場」、ラグビーボールのような「中央ホール」、有機的な物質を想起させる「健康増進施設(温浴・プール)」は圧巻である。「前衛」抜きには語れない革新的な建築であり、それまでの高崎正治の形態デザインを集大成した作品である。一方、この形態を支える構造や設備だけでなく、「現場打ち薄肉シェル」をはじめとする施工技術に於いても当時の高い技術力を示している。
1998年(平成10年)9月にオープンしたが、体育館や芝生広場を除く部分は2011年(平成23年)3月末に一旦閉館している。その後2016年(平成28年)4月1日に、行政の方針転換により本館を始めとする南側建築群が鹿児島県から指宿市へ譲渡され、漏水などの大規模修繕を行った後、2018年(平成30年)4月1日に指宿市役所庁舎の一部としてオープンした。現在は展示会場、会議室などの貸し出し、グランドゴルフや地域の運動会などのスポーツや、地域活動など多くの市民に利用され稼働率も高い。また、近くの指宿市民会館が老朽化していることから南側芝生広場内に建替えを計画中である。一方、北側の研修宿泊・健康増進施設(温浴)は鹿児島県所有のまま現在休館中である。