鹿児島県033

トリアーデ妙円寺

  • 1996年竣工
  • 設計/オフィッチーナ松井、東条設計
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造 地上3階
  • 用途/住居建築
  • 所在地/鹿児島県日置市伊集院町妙円寺三丁目53-23

鹿児島県住宅供給公社によって昭和50年代に開発された妙円寺団地内の棚田形に造成された戸建て分譲住宅地50数戸の区画に平成7年から平成11年にかけて県営40戸と市営20戸の計60戸の公営住宅を建設している。
敷地は第一種低層住居専用地域内にあり、東西144m、南北115mの矩形で、南東の角と北西の角との高低差は8mを有する北向き斜面の土地である。主な住居プランは6畳2間と洋室+DKである。
県営の住居棟には16戸のメゾネットを2層・3層に設けている。
敷地の造成は南側の市営住宅のGLより県営住宅のGLを1層分の2.9m低くし、前者は2層、後者は3層とし、両者のGL間に1層分の差を設けることで、両者の軒高を同じ高さに押さえている。両者のGLは緩い斜面によって結合されている。斜面には斜交する勾配12分の1以下の斜路を設けて車椅子用の通路としている。また、市営側のレベルから橋を架け、県営の2層目のレベルにあるペデストリアンデッキと連結されている。
県営のペデストリアンデッキと市営住棟の北側にある東西130mに及ぶポルティコ(列柱廊)は同レベルで向かい合って、斜面を挟んだ外部空間に、住民の交流が生まれるよう期待されている。
県営の住棟には、東西に長い県営と市営の住棟とは異なる形のものが敷地の東北の角と西北の角に配置され、団地全体の北側空間にアクセントをもたらしている。
躯体はすべて壁式構造で1mモデュールを採用し、通路や扉の幅などに余裕を持たせている。
住居単位と部位を基板にグレー、青、からし色の3色を基調に塗り分け、赤を巧みに配し、絶妙なカラーハーモニーとなっている。当時にはない雰囲気を醸し出し、周辺環境にもマッチしている。
団地名のトリアーデはイタリア語のtriade(三和音)からとられている。住棟の3つの類型、色彩の3基調色、それらが要約されている。
設計は建築家として長くイタリアで活躍し、帰国後、鹿児島大学工学部教授として当時教鞭をとった松井宏方である。松井宏方は、ミラノのグレゴッティアソシエイツでパートナーまでつとめ、パレルモ ZEN 住宅団地、カッナレージョ地区集合住宅等々の囲み型の集合住宅の設計に関わってきた。そのため妙円寺の住戸配列には、囲み型住宅に見られる中庭に抜ける中間領域的な空間が確認され、一般的な国内の集合住宅とはことなる空間が設えられている。