岡山県001

倉敷市立美術館

  • 1960年竣工
  • 設計/新築:丹下健三研究室 改修:浦辺建築事務所
  • 施工/大林組
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造 地上3階、地下1階、塔屋2階
  • 用途/文化施設(元 官公庁舎)
  • 所在地/岡山県倉敷市中央二丁目

倉敷市立美術館(旧倉敷市庁舎)は水島臨海工業地帯発展に伴う倉敷市の都市構想の一環として倉敷駅から南に伸びる主要幹線道路沿いの美観地区に近い地に丹下健三研究室により、市民広場、公会堂とともに計画され、南端の市庁舎のみが昭和35年(1960年)に完成した。丹下は倉敷の美しい家並みに愛着を覚えるが、大原總一郎の「新しい市庁舎は,古い倉敷の民家群に従わないで, これらを新しい方向に導いていくようなものでありたい」※との思いに同調し、伝統を「痕跡をとどめない、触媒のようなもの」※と捉えてデザインを進めたとしている。そして、都市における公共建築のスケールと長期的サイクルを考えた場合、鉄とコンクリートによる構造体が規定されるとする※。随所にル・コルビジェの影響を感じさせながらも外装材は全面プレキャストの中空ブロックを横長の深い開口を穿って積層することで校倉造りの様相を呈し、さらに繊細な日本的木組モチーフを組み込む外観デザインに丹下のこの時期の特徴が見られる。内部は2つのコアに挟まれた中央部の吹抜けを市民ホールと名づけられ、3階に議場が乗り、その上部屋上は階段状のイベント空間に設えられている。ホール壁面の開口部と議場内部の勾配のついた円弧天井と緩やかに湾曲した内壁にル・コルビジェのロンシャン礼拝堂の直接的影響が見られる。
1980年まで20年間市庁舎として利用され、1983年から浦辺鎮太郎の設計により倉敷市立美術館として転用された。EVコア棟を西側に増築し、北西部分を新築された図書館と連結したことを除き、可能な限り丹下建築の特徴を残しながら美術館の機能が付与されている。玄関を南から北へ移し、1、2階の市民窓口、行政窓口を展示室、3階の議場は講堂とした。屋上から2階までのライトシャフトは3階までとなった。公共建築を用途変更してサスティナブルに利用する点で優れた取り組みであり、今も市民や観光客に利用されている。

※:「新建築,1960.9」