岡山県028

奈義町現代美術館

  • 1994年竣工
  • 設計/磯崎新アトリエ(磯崎新)、柳沢建築構造設計事務所
  • 施工/大成建設中国支店
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造および鉄骨造 地上2階
  • 用途/文化施設
  • 所在地/岡山県勝田郡奈義町豊沢441

奈義町現代美術館(以下奈義MOCA)は岡山県北東部鳥取県境のまち、奈義町制施行40周年記念事業として、自然とアート、建築の融合を理念に美術館ブームの終盤、磯崎新アトリエ設計によって1994年(平6年)に完成した 。
磯崎氏の提唱するその場所に帰属する作品や置かれた場所の特性を活かした建築家とアーティストのコラボレーションからなる「第三世代の美術館」※では日本で嚆矢となる。奈義MOCAは作品体感型の三つの芸術空間と図書館で構成され、それぞれに彩色された直方体、円筒形、三日月型の積み木を組み合わせたような分散型の建築は、いくつかの軸線によって配置される。直方体の図書館・レストラン棟は前面のシンボルロード軸にパラレルに、「大地」(宮脇愛子棟:作品「うつろひ」)の長軸は那岐山頂方向軸に、円筒形の「太陽」(荒川修作+マドリン・ギンズ棟:作品「偏在の場・奈義の龍安寺・建築する身」)は南北軸と重なり、三日月型「月」(岡崎和郎棟:作品「HISASHI」)は中秋の名月の22時の軸に向いている。那岐山を中央に、手前に「大地」、左右に「月」「太陽」をイメージした立体を配することで、都市構造に自然軸を合成して自然を再認識させる構成となっており、こうした磯崎氏特有の論理構築と造形性の融合による作品の強度が顕著に示されている。
「10年後には同じような美術館ができる」※という磯崎新の先見性を裏付ける言葉通り、21世紀の体験型美術館、さらに次の世代を視野に入れた美術館が、国内においても次々と誕生している。現在も、町立ながらもネットワークを駆使して、県内外のユニークで優れた、多種多様な作家のアート作品を四半世紀に渡って紹介し、県内外から鑑賞者が継続的に来訪している。

※磯崎新は美術館の発展段階を大きく三つに区分して考えている
「第一世代」:18世紀末、王侯貴族のコレクションを一般に公開。
「第二世代」:1960年以降、各地に開設された建設後に作品を受け入れるいわゆるホワイトキューブ
「第三世代」:芸術家が作品を自由に空間に設置(インスタレーション)するような傾向とかかわって、独特な性格をみなぎらせる、芸術家のインスピレーションを触発するような空間造形を持つ
(「磯崎新:造物主義論,鹿島出版会,1996」)