岡山県029

かもがわ総合スポーツ公園体育館

  • 1995年竣工
  • 設計/青島裕之建築設計室
  • 施工/鴻池組・蜂谷工業共同企業体
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造および鉄骨造地上1階、地下1階 鉄板葺
  • 用途/文化施設
  • 所在地/岡山県加賀郡吉備中央町上田東

この建築物は岡山市内から北へ40㎞ほどの緑豊かな山間部・吉備高原にある。「クリエイティブTOWN岡山(CTO) 」のプロジェクトの一つであり、コミッショナーの岡田新ーから青島裕之が設計者として指名され、1993年に設計が開始、平成7年(1995年)に竣工した。竣工時は「加茂川町民体育館」であったが、その後加茂川町が合併により吉備中央町に改組されたことに伴い、「かもがわ総合スポーツ公園体育館」と改称された。
この建築物は、周辺の山々が織りなす雄大な自然の風景に対峙するために、純粋形を用いた力強い形態によって構成されている。すなわち、芝生で緑化された正円平面の基壇の上に約50m角の正方形平面のアリーナの壁が浮かぶように屹立する。さらには基壇頂部の外周に沿って設けられた1周250mのランニングトラックによって中心性が強調されている。
アリーナの外周部の上部に傾斜トップライトを設けることにより、柔らかな間接光が得られ、均質的な明るさを室内全体に確保している。また、トップライトの内側に雨どいが設けられ、四隅のスリット部分で排出されるようになっているが、このスリットによってアリーナ上部のマッスは分節化され、建築物にエッジの利いた軽快さが付与されている。
外周部に設けられた3角錐を交差させた鉄骨フレームと屋根の立体トラスの組み合わせというユニークな構造によってアリーナの空間は支えられている。この構造システムでは四隅に構造体が不要なため、スリットと相まって軽快さと明るさを空間に与えている。
上部からの光が構造体に反射したり、すり抜ける様相を青島裕之は「光と構造の戯れ」※と呼び、純粋形や対称軸の建築構成とあわせて、師・岡田新一、さらにはルイス・カーンの作風に通ずるものとして自身の作家性とみなしているが、この建築物はそれが明快に表現されたものである。
竣工10年後の2005年には国民体育大会のバレーボールの会場になったほか、各種室内競技の会場として、継続的に利用されている。

※青島裕之の本人談による(2022年2月17日)