吉備高原小学校はクリエイティブTOWN岡山(CTO)プロジェクトとして、小泉雅生+小嶋一浩/C+Aの設計により1998年(平成10年)、岡山県中央部の新都市、吉備高原都市に完成した。
「豊かな自然が残る中で、建築が主張することなく、樹木の間から子供たちの活動が見え隠れする場所をつくろうとする」※想いから、まず樹木が配置され、樹木がないところに木質系屋根架構が架けられて教室が創出されたとする。約80m四方の中に子供たちの活動の場が散在され、教室の境界を仕切る建具のないワークスペース、中庭が連続的につながるオープンスクール形式で外部スペースは椅子になるオブジェが置かれて「外の教室」※と設定されている。通常の廊下に当たる動線は透過性屋根のある半屋外の生徒たちの活動の軸、パスとなっており、教室ゾーン、職員室などの管理ゾーンや体育館と図書館や音楽室、食堂などの地域開放ゾーンと結ばれる。
こうして生徒のアクティビティの誘発に主眼を置いて既成の建築形式から「多様な解釈を許容する」※提案を続けるC+Aは千葉市打瀬小学校(1995年)の空間配置を踏襲しつつ、そこでの強固なRC構造から本計画では地域になじみ、人にやさしい木質系混構造にいち早く取り組んだ。
教室棟は平家建てで限られた耐力壁とコンクリート柱の上部を集成材架構にした組み合わせや平面隅部の抜け、また体育館では櫓状の鉄骨トラス架構体と外周のポリカーボネート・シャッターや木製ルーバーの界壁など構造的工夫とデザインは相補して生徒の活動がまさに見え隠れする透明感をもった空間質を高めあう。以降、この地域にもオープンスクール形式の学校がいくつか続き、また、空調システム改修時に中庭の室外機が透明な連続性を損なうために住民反対があったことはこの学校、空間形式が評価され、愛されてきたことを物語る。
※「新建築,1998.7」 赤松佳珠子、小泉雅生/C+A 参照