静岡県012

北山本門寺大客殿

  • 1971年竣工
  • 設計/内井昭蔵建築設計事務所
  • 施工/井上建設
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造 地上1階 銅板葺
  • 用途/宗教建築
  • 所在地/静岡県富士宮市北山

日蓮宗古刹の客殿と宿坊として1971年につくられた。設計は内井昭蔵(1933-2002)。
本堂と大庫裡の中間に位置し、これらをつなぐ回廊と共に設計された。建物は壁式RC造で、正方形の平面をもつ客殿、客室とサービス部分、これらに挟まれた玄関から構成される。これらの外観は一体化されているが、客殿とその他の機能では要求される空間、天井高が異なるため、客殿部分は方形屋根、その他の部分は2棟の細長い寄棟屋根で間に中庭を取っている。
客殿は、北側に内陣を取り、屋根形状を反映した四角錐の天井で、中央に棒状のアクリルを用いた間接照明を下げている。客殿背後には本堂に続く渡り廊下があるが、これは敷地形状に応じて緩く長い登り勾配となる。渡り廊下は照度を下げ、途中4箇所、左右のスリット状の出窓から間接的に採光し、本堂への期待を高めるアプローチとなっている。渡り廊下から続いて客室とサービス部分の前の廊下が延びるが、中庭との仕切りはガラスのみで壁はない。ここはこの建物の廊下としてだけではなく、大庫裡や背後の書院と本堂とをつなぐ室内動線として計画されている。室内にはケヤキの練り付け合板が多用され、木の風合いを活かしている。
外壁は打放しコンクリートだが、玄関周りの木製下見板とデザインを合わせた出目地を取り、コーナー部では室内の建具枠と合わせた几帳面を取るなど繊細な表現を見せる。モダニズムとは一線を画した陰影のある表情が、内外で共鳴するようにデザインされている。