静岡県019

焼津の文房具屋

  • 1978年竣工
  • 設計/長谷川逸子
  • 施工/桑高建設
  • 構造形式/鉄骨造 地上2階(一部3階) 鉄板葺
  • 用途/商業・事務所建築
  • 所在地/静岡県焼津市栄町

地方都市の市街地に建つ、文房具・事務機器会社の小規模オフィス兼倉庫。竣工は1978年。設計は長谷川逸子(1941-)、構造設計はTIS今川憲英。後に著名な建築家となる設計者はこの町の出身で、この作品は住宅以外ではじめて手がけた事務所建築であった。
小学校の正門前の角地に建ち、角を空地とし、妻側、平側の2面が正面になる。構造は鉄骨造で、丸柱と梁による架構に鉄筋コンクリートスラブが打たれている。一方、外壁は木下地にアルミパネル仕上げとして、屋根は3つの切妻が長辺方向を棟として並び、これが内部の天井面にも現れている。高さは、空地前の手前の棟だけが高く3階建て、他は2階建てで、家形の形状に変化を与えている。ここに見られる架構の均質性と屋根形状の変化は、いわば構造と形態の不一致あるいは平面と立面の不一致であり、結果的にモダニズム建築への批判的表現となっている。小規模ながらも、時代の状況を捉え、大げさな操作や装飾を用いることなく、高い批評性を持ち得た建築である。
一部増改築が施されて、外壁も金属板平張りとなったが、現在も当初からのオーナーによって継続的に使用されている。