静岡県021

静岡市立芹沢銈介美術館 石水館

  • 1981年竣工
  • 設計/白井晟一研究所
  • 施工/大成建設
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造および壁式RC造 地上1階
  • 用途/文化施設
  • 所在地/静岡県静岡市駿河区登呂

静岡市出身の工芸作家、芹沢銈介の作品と収集した民俗資料を、展示・収蔵する美術館として1981年に竣工した。 設計は白井晟一(1905-83)。白井は自ら好んだ京都・高山寺・石水院に因み、この建物を石水館と命名した。
建物は登呂遺跡公園の一角に位置する。平屋で、外周からはほとんど石の壁に見える。この石は白井が紅雲石と呼んだ韓国産赤御影石の割肌を積んだもので、その粗く重い量感がこの建物の印象を決めている。壁は500mmと厚く、抱きの深いアーチ窓が開けられ、古い礼拝堂のような表情を見せる。
諸室は水の張られた中庭を囲んで配され、来館者はこの中庭の横を通って建物に入る。壁式構造のために小割にされた諸室は、石で枠取られたアーチ形の開口部でつながれており、いくつかの展示室では、床に磨きの黒御影石を用いている。展示室や中庭の一角にはロマネスクの柱頭をもつ柱が立つ。各室の天井は、木工家、早川謙之輔の手によるナラの白木で、展示室によって仕上げに変化をつけている。
この建築は内外ともに素材感と陰影に溢れ、モダニズムが標榜した均質性、非物質性とは対極の感覚に訴える。活躍の時期がモダニズムと重なりながら、それとは異なった独自の作品を残した建築家の晩年の秀作である。