静岡県028

掛川市庁舎

  • 1996年竣工
  • 設計/日建設計
  • 施工/清水建設
  • 構造形式/鉄骨鉄筋コンクリート造および鉄骨造 地上6階、地下1階
  • 用途/官公庁舎
  • 所在地/静岡県掛川市長谷

日建設計の林昌二(1928-2011)の構想によって1996年に竣工した掛川市庁舎。延べ面積約1万6千㎡、総工費約61億円である。1956年竣工の旧庁舎も林昌二の設計であった。林昌二は「庁舎はオフィスではない。シティホールである」と言った。市民のための建築として、様々なアイデアが高い技術力によってここに統合されている。
半ば小山に埋もれるようにSRC造による太い柱梁のラーメン構造を両端に置き、その間をH-200x200の格子構造が連結している。アプローチの視線は30m先の反対側の窓を越えるほどで、透明度が高い。内部に入ると段々畑状にスキップするフロア構成が一望できるアトリウム空間が広がるが、これは地元の茶畑の景観を参照したといい、霜取り用のファンが回る。アトリウム側に開放的な打合せスペースを設け、奥に執務室を設ける平面構成で、外壁側に廊下を配し、執務室をサンドイッチして、係長・課長級の役職者が中央のコア側に並ぶという、市庁舎あるいはオフィスとしては革新的な動線である。アトリウム越しに各部署の様子が一望でき、市民のための組織が視覚化されている。外周部を巡る回廊は、ダブルに組んだH型鋼の格子構造により保持され、H型鋼には耐火被覆が無いため透明性がさらに強調される。
新幹線からの視線を狙って6階に設けられたステンレス葺き半円状断面の議場の形態は、合掌が造形化されており、市民のための議論を行う場としての象徴性が権威的にならずに実現されている。38条認定により設計されていることから、増築が困難という側面も想定されるが、市庁舎の設計理念であった「市民の誇りとなる建築」が、四半世紀近く経過しても何ら陳腐化していないことを実感できる。