神奈川県002

山口蓬春記念館

  • 1953年竣工
  • 設計/吉田五十八
  • 施工/水澤工務店
  • 構造形式/木造2階建、切妻一部寄棟造桟瓦葺
  • 用途/文化施設
  • 所在地/神奈川県三浦郡葉山町

葉山の一色海岸からほど近い丘陵の中腹に建つ旧山口蓬春邸は、日本画家の山口蓬春(1893-1971)が1948(昭和23)年から亡くなるまで過ごした住宅である。昭和初期に建てられた建物を友人の吉田五十八の助言を受けて山口が購入し、その後、吉田五十八の設計により、1953(昭和28)年に画室の増築、1957(昭和32)年に1階の一部が増築された、アトリエ兼住居である。
増築された画室は、南側に床を一段低くした「ヴェランダ」と称する空間を設け、さらにこのヴェランダとの境に床から天井までの大きな引き込み式の明かり障子を設けることで、室内にやわらかい拡散光を十分に取るとともに、障子を開けると庭との一体感が可能になる。
大壁造り、「八掛」の納まり、手すりや建具の桟に見られる細い線で構成されたディテールには、「近代数寄屋」と称される吉田五十八流の数寄屋風意匠の特徴が良く表れている。
1991(平成3)年に行われた「山口蓬春記念館」への改修では、吉田五十八が増築を手掛けた部分はほぼ当初の姿のまま残され、従前建物の部分が改修された。