神奈川県004

万葉公園万葉亭

  • 1955年竣工
  • 設計/堀口捨己
  • 構造形式/木造平屋建、寄棟造茅葺
  • 用途/文化施設
  • 所在地/神奈川県足柄下郡湯河原町

万葉集に詠まれた唯一の温泉であることに因んで湯河原温泉に作られた万葉公園の中に建つ、野趣あふれる茶室である。設計者の堀口捨己によるこの茶室は、国文学者佐佐木信綱(1872-1963)の意見のもと設計された。
茶室は入口外部に待合を設け、内部は炉のある寄付と8畳の茶室、水屋、収納からなる。万葉集に収められている「はたすすき尾花逆葺き黒木もて造れる室は万代までも」を再現しようと、炉のある寄付は土間仕上げとし、皮付きの柱・梁を使用し、茅葺屋根をかけている。
戦後まもなく伊勢神宮、出雲大社などの古代神社や尖石遺跡などの竪穴住居の復原研究に取り組んでいた堀口が、原始住宅や古代の住まいから着想を得て創出したものである。本来は公園全体で計画され、鉄筋コンクリート造の「万葉館」と一対の施設として構想・建設された。
現在までに、皮付きの柱・梁の補修、屋根の葺き替えなど、大変手間のかかる大規模な補修・改修が行われたが、雰囲気は良く維持されており、小さい建築ながらも、設計者の意図が伝わってくる作品である。