神奈川県009

横浜市庁舎

  • 1959年竣工
  • 設計/村野・森建築事務所
  • 施工/戸田建設
  • 構造形式/鉄骨鉄筋コンクリート造地上8階地下1階建、陸屋根
  • 用途/官公庁舎
  • 所在地/神奈川県横浜市中区

横浜市庁舎は、市政100周年記念事業の一環として、指名設計競技で5者の中から選ばれた村野藤吾により設計され、1959(昭和34)年9月に竣工した大規模市庁舎建築の傑作である。庁舎の構成は、高層8階建ての行政棟と4階建ての議会棟、および両者をつなぐ2階建ての市民広場からなる。高層棟と低層棟を対比的に構成する手法は、戦後民主主義を象徴する大規模市庁舎建築に用いられた典型的な設計手法であるが、両者をピロティではなく内部空間を持つ「市民広場」でつなぐ点に村野の独創性が示されており、設計競技ではこの点が高く評価された。この市民広場の内部には、1,2階吹抜け空間に壁面レリーフ(辻晋堂作)と2階へ上がるオブジェのような階段があり、村野特有の空間を見事に醸し出している。
外観意匠は、コンクリート打ち放しの柱・梁を露出し、その内側を暗褐色のタイル貼りとする手法、すなわち世界平和記念聖堂(重要文化財)や早稲田大学文学部校舎と同じ1950年代の村野作品に見られるデザインであるが、高層棟の外周柱では、見付寸法は変えずに、上に行くに従いゴシック建築のバットレスのように段階的に見込み寸法を細くする手法が用いられた。
3棟とも大きな改変無く当時の面影を良く残しているが、高層棟は2009(平成21)年に免震レトロフィットが施された。

受賞歴等/神奈川県建築コンクール入賞