神奈川県010

箱根ホテル小涌園

  • 1959年竣工
  • 設計/吉村順三
  • 施工/清水建設株式会社
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造8階建、陸屋根
  • 用途/商業・事務所建築
  • 所在地/神奈川県足柄下郡箱根町

1964年の東京オリンピック開催に向け、藤田観光が箱根への観光客誘致を目論んで建設した国際観光ホテルであり、1950-60年代の国際観光ホテルに求められた、日本の風景を巧みに活かしつつ同時に近代的な機能を備える、という条件に設計者である吉村順三が巧みに答えたホテル建築の傑作である。
建物の平面は前面道路のカーブに沿った「く」の字型で、同時に反対側では傾斜地に設けられた庭を包む様に計画された。エントランス、ロビーを5階のほぼ中央に設け、そこから上下両翼に客室が展開する。エントランスを5階に設けることで、道路側立面は周囲の景観に配慮し低層に見えるようにし、反対側は敷地の傾斜を利用して全ての客室・浴室に十分な眺望を確保している。
建物の外観は、水平・垂直方向に組まれた柱梁の躯体に、深い水平の庇、横長の大きな開口部に障子や格子を連想させるコンクリートブロックを組み合わせた、端正なモダニズムの意匠である。客室や食堂のインテリアには、明かり障子などの日本建築の意匠を取り入れている。
設計者の吉村順三にとっては最初に手掛けた大規模建築であり、それまでの住宅中心の設計活動から大規模建築も手掛けるようになる転機となった作品である。
長い間、箱根の顔としての役を担い、高度成長期の国内旅行の発展を牽引してきた建物である。過去に幾度となく、増改築、改装を行なってきたが、時代のニーズの変化や建物の老朽化により、2018(平成30)年1月に建物の使用を終了した。今後の予定は未定である。

受賞歴等/表彰建築物設計賞