神奈川県031

ザ・プリンス箱根芦ノ湖

  • 1978年竣工
  • 設計/村野・森建築事務所
  • 施工/清水建設株式会社
  • 構造形式/鉄骨鉄筋コンクリート造地上3階地下1階建、切妻造銅板葺
  • 用途/商業・事務所建築
  • 所在地/神奈川県足柄下郡箱根町

国立公園である箱根芦ノ湖畔に建つリゾートホテルで、敷地の周囲には杉・松が密生する。建物はエントランス、ロビーなどを含む矩形平面の主棟と円形平面の客室棟2棟で構成され、湖畔全体の風致に寄与するように配置が計画された。エントランスの屋根は軒が低く、高さを抑えているのに対し、客室棟の外観は樹間に馴染むように、有機的な装飾と複雑な形態により陰影を生む形態となっている。
主棟のエントランスから奥へ導かれるように湖畔に向かって階段を下り、渡り廊下を通って樹間を抜け、客室棟に至る動線計画となっている。天井高を低く抑えたエントランスは水平方向に空間が広がり、奥に続くロビーは一転して天井高が高く、外壁と同じ材料手法で仕上げられた両側の柱は、中央にスリット状の照明を持つ二つの曲面天井をそれぞれ支え、あたかも森の中を抜けるガラス張りの通路のような印象を与える。客室棟は中心に円形の中庭と階段室を設けたドーナッツ状のプランで、1,2階が吹き抜けの食堂、その上に客室を2層設けている。客室は放射状に並ぶため、各々窓から見える景色が異なり、周囲の自然との関わり方が変化に富んだものとなっている。
時代のニーズに合わせ、商業施設等一部に改修された箇所があるが、当初の雰囲気はそのまま残る。設計者の80年代の作風が多く見られる建築である。

受賞歴等/BCS賞・JIA25年賞・神奈川県建築コンクール優秀賞・かながわ地球温暖化対策大賞・BELCA賞