神奈川県030

西谷の家

  • 1976年竣工
  • 設計/内井昭蔵設計事務所
  • 施工/宮内建設
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造平屋建、寄棟造銅板葺
  • 用途/住居建築
  • 所在地/神奈川県横浜市旭区

相鉄線西谷駅を海老名方面に向かう切通しの上に建つこの住宅は、敷地と道路面との高低差を擁壁や法面の植え込みによって吸収し、寄棟屋根の深い軒線や段葺きの屋根のシルエットが丘の稜線と一体に見えるように景観的に配慮して設計された。外壁は鉄筋コンクリート造・煉瓦タイル張り、屋根は鉄骨造の銅板葺きの平屋建て住宅である。
門は坂道が敷地の高さまで達した位置に小さな前庭を介して設けられ、そこから門扉をあけ煉瓦塀に沿ってポーチ・玄関に至り、この半地下の玄関ホールから階段を上ると正面に中庭があり、そこから見返すと居間・食堂に囲まれた住居の中心部がある。寝室は中心部から東に親の、西に子供たちのゾーンが延び、それぞれ専用の浴室・便所を持つ。大きな寄棟屋根の下に二つの生活の場と家族が集う場所を設けて、プライベートゾーンの独立性とパブリックスペースを確保するために「多核コアシステム」が採用された。煉瓦タイルも中庭から室内へと連続し、室内外の空間の連続性を強く感じさせる。
居間から見る電車は迫力と騒音を伴うが、音はRC造の躯体、擁壁の高低差に遮られ、視線も枝を広げた桜や植栽に和らげられ、対岸の公園へと逃してくれる。築40年の間に屋根材がコロニアルの重ね葺から銅板葺に変更され、床暖房などの設備機器も改修工事で交換された。 現在の所有者は孫世代に代わり、カナダ人家族が借家として中庭をエントランスにして使っている。

受賞歴等/神奈川県建築コンクール優秀賞