奈良県008

御所市立名柄小学校

  • 1990年竣工
  • 設計/株式会社久米建築事務所
  • 施工/株式会社鍛冶田工務店
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造2階建、切妻造桟瓦葺
  • 用途/学校建築
  • 所在地/奈良県御所市

金剛・葛城山麓の田園風景に恵まれた地域の、国道309号と県道30号が交わる交差点の南東の位置に建つ。明治7(1875)年に創立した歴史ある小学校で、現在の校舎は平成元(1989)年、屋内運動場は平成2(1990)年に竣工したもの。
昇降口のある校舎を中心として、南側に普通教室棟、北側に特別教室棟があり、H型の校舎配置をもち、RC造の地上2階建ての建物である。北側の特別教室棟と渡り廊下で繋がる形で、旧特別教室棟(対象外)がある。また、一段下がった敷地に運動場があり、その西側にS造平屋建ての屋内運動場が建つ。
校舎も屋内運動場もエンジ色の瓦で葺かれた切妻屋根で、背景の山並みの緑とのコントラストが美しい。校舎は軒の出が深く、妻壁のアーチや細部に至るデザインが凛とした学校建築の佇まいを整えている。屋内運動場の妻壁にも、幕板部に半円アーチの装飾がつき、校舎との調和を図っている。屋内運動場の内部仕上には天井面や鉄骨梁の側面などに木製の板を張るなど意匠的な工夫が見られ、木造であった旧講堂に敬意を払っているかのようでもある。
校舎も屋内運動場も旧講堂のファサードをモチーフにしているが、旧講堂は大正15(1926)年に武田五一の弟子で、奈良で多くの近代建築を手がけ活躍した岩崎平太郎が設計したもので、妻面ファサードにロマネスク風の半円アーチを繰り返したデザインの木造建築であった。
名柄小学校教育のシンボルとして、長く親しまれた旧講堂の面影を残し、児童や学校関係者に留まらず、地元住民及び観光客にも長く愛され続けており、地域の歴史を継承した全国的に見ても優れた学校建築の一つとして貴重なものである。