奈良県東部の御杖村に平成10年に完成した御杖小学校は、過疎化に伴い統合したすることになった3小学校の校舎として、「象徴的な100年生きる建物」をコンセプトに青木淳氏が設計した建築である。建設地は、御杖村の中心となる場所で、新たに山を造成して校舎・プール・運動場等が一体的に整備された。校舎は、一周半分の末広がりになった螺旋状スラブを基本的骨格とした建物で、中央部がテフロン加工テント膜の浅いドーム屋根で覆われている体育館になっており、その周囲に螺旋状に教室が配置されている。本体建物に付属するひとまわり小さい螺旋状の建物は図書室・PC教室で、螺旋状スロープで全体が一続きとなっており、連続性を目指した特徴的なデザインの作品となっている。
建設当初は、間仕切りの無いオープン教室として利用されていたが、空調・騒音対策として現在は学校用間仕切りで区切られて使用されている。図書室が村民に一般公開され広く利用されていることや、校長先生から螺旋状の特徴的な校舎で学ぶ6年間は、児童にとって深い思入れとなると伺っていることから、地域に根ざした建築になっていると思われる。また、各機能空間をオープンにして連続的な空間をつくる手法は、当時の学校建築の動向を示しており歴史的価値もある。