文化庁主催 第2回コンテンツ流通促進シンポジウム
放送番組は、ブロードバンド配信の主役となり得るか?

2004年12月1日 国立オリンピック記念青少年総合センター(カルチャー棟小ホール)
トップ 特別講演 検討会の報告 パネルディスカッション
パネルディスカッション
上原氏からの話題提供 
中村氏からの話題提供 
橋本氏からの話題提供 
遠藤氏からの話題提供 

前のページへ 1234 次のページへ

どうもありがとうございます。ちょっと視点を変えていただきまして、次にご発言いただこうと思っているのは、広告代理店の電通の峯川様なのですが、広告代理店の視点ですと、メディアがどう変わるのか、コンテンツがどう変わるのかというのは非常に興味のあることであって、そこに実はビジネスモデルを見定めているはずなのです。広告代理店の視点でそのモデルが異なる、ないしは交錯することによりまして、著作権上の視点といいますか、問題点ということで、ご指摘があればちょうだいしたいと思います。

私どももブロードバンドの急速な拡張という中で、テレビCMをインターネットでも流せないかという課題に取り組み、3年ほど推進や調整をやってまいりました。ここでも全く同じような問題が発生しています。当初、やはり権利問題の処理、それから技術的な問題といったところが中心になって、各業界団体さんを繋ぎながら一番いい方法は何だということで問題解決をやってきたわけです。それと同時に、広告主に実際のCMを出稿していただいて、各メディアさんにCMを流せる枠を作っていただいて流してみる。それによってユーザーがどう接触し、反応しているのか、そして広告主にどう満足していただけるかという広告効果についても検証してきました。

権利問題や技術の問題は、実は2〜3年も議論していると、当たり前ではないかというようなお話になってくるのではないでしょうか。それはコンテンツと言われる「番組」でもやはり同じことだと思います。確かに当初はそこが障害になるのですが、新しいことをやれば、そこには新しい問題が発生するわけで、その都度関係している皆さんで取り組めば、ルールは簡単にできるはずです。我々もそういった考え方で、問題をクリアしていく仕組みやルールを作り対応してきました。その辺についてはほぼ関係業界の中では落としどころは見えてきたという状態だと言えます。

ところが今お話を聞いていますと、コンテンツ、番組といわれるものは、実態として、まだ実験とか検証にすら至っていないのだなと感じます。ようやくそこに入りはじめたばかりで、今語られているのはほとんど技術の問題、あるいは送り手のビジネスモデルの問題だけで、視聴者、あるいはお金を負担していただく広告主がどう動かれているのか、どう感じられているのか、何を欲しがっているのか、これがまだ全然見えていない状態なのではないでしょうか。これは誰も経験していない新しいメディアなのですから、恐らくやりはじめないとだれも分からないのだと思うのです。

我々の場合はCMという限られた範囲ですから、やりはじめてみて、「あれ、こうではなかったな」ということが幾つもすぐに出てきました。ですから仕組みとしてはある程度できてきたのですが、これから何をしなければいけないかという点では実は大きな問題が出てきてしまいました。テレビCMをそのまま流すだけでいいのか、単なる二次利用でいいのかという問題に今ぶち当たりつつあります。今まで広告キャンペーンを実施するとなると、効果的にメッセージを伝えていくために新聞、雑誌、テレビ、ラジオ、インターネットといった広告媒体をメディアミックスというのですが、メディアの特性に合わせていろいろな組み合わせを考え、それぞれいろいろな手法を考えるわけです。当然メディアによってクリエイティブも違います。とはいえ、広告主側にもいろいろな事情があります。予算であるとか、準備の日程が短いとか。そうなりますと、例えば新聞と雑誌が同じクリエイティブだったりすることもあるわけです。しかし十分な時間と余裕があれば、本来すべてメディアによって表現が違うべきものだと考えられています。

テレビCMはもともと莫大なお金をかけて制作されていますし、CM自体は非常に効果があるということで、当然のことながらそれを二次利用したいという広告主側からの要望は強くあるわけです。従って、テレビだけで使っているのはもったいない、インターネットでも効果があるではないかということで使ってみると、ケースによりますが、やはりネット用にはここをこうしたほうがいいのではないか、クリエイティブ的にはここをこう変えたほうがいいということは沢山出てきたりします。一方では、テレビCMをそのまま使うという発想と同時に、フラッシュなどの比較的簡単な技術、映像制作の費用がかからない別の方法で動画の広告を作るという手法が生まれはじめています。これはネットという媒体特性に合わせてユーザーに対して他のメディアとは違うアプローチをしたいという要求が広告主さんからもあるということなのです。

これは今、どちらがどちらか分からない状態で進んでいます。ある部分ではユーザー自体がテレビと同じように受け身で見ています。その場合はインターネットにテレビCMを流すと大変効果的です。そうではなくて、コンテンツがインタラクティブに機能しているときにCMは邪魔だと言われるケースなど、いろいろあります。ですからこれはいろいろな戦略を立てて、メディアの特性に合わせて考えていかなければいけないというレベルに入ってきています。

同じように、コンテンツの話をお聞きしますと、その辺の検証が実はまだ始まっていないのではないかと思うのです。ようやくコンテンツが流れる、流れない、あるいは流そうと思うものが流れるか、流れないかというレベルのところで止まっている部分があるのではないかと思います。これが動きだしたら、多分いろいろなことが起こると思います。

やはり今日非常に面白いなと思って伺ったのは、第1部の吉村さんのお話で、ここにはたくさんのヒントがあったような気がします。一番近い話で言えば、メディアのシナジー効果です。同じコンテンツですが、テレビで流すときと携帯で見るときとでは全然違います。単純に言えば、予告編を見ればいいメディアと、本編を見るメディアは違うと思います。我々は生活の中で、とにかくすべてのメディアに接触しているわけですから、広告でもそれをうまく使い分け、バランスを取りながらコミュニケーションを考えなければならないのは我々広告会社も同様だと思います。そういう発想ができるから、多分コンテンツビジネスがうまく回るのだと思います。一つのメディアだけで単純に一つのことを考えていても、今は回らない時代だと思います。そこが、これからのポイントなのではないかと思います。

どうもありがとうございます。実は広告自体もコンテンツなのです。広告コンテンツは、全く違う発想で作って工夫しなければならない、そこに市場があるだろうというご指摘になるのだろうと思います。確か広告の市場は日本では年間おおよそ6兆円と言われているそうですが、もうインターネットに代表されるバナー広告等の広告費用、広告の売り上げは、ラジオ全体の売り上げを超えるのではないかと言われているのだそうです。そこはちゃんとスポンサーがついて、大きなビジネスになっているということだろうと思います。

著作権ないしは契約についてのご指摘、ご意見がなければ次に行きたいと思いますが。

著作権の関係のことについての現在の状況についてまとめた報告といいますか、私の感想をお話しさせていただきたいと思います。

先ほど橋本さんから、二次利用に当たっての問題点は昔と違って急速に整理されてきた、そのことによって前のような問題はなくなり、あとはテレビ局が汗をかいてくれればちゃんとできるというお話がありました。それに、当然、テレビ局、プロダクションもできるだけ作品を流通させて、そこからリターンを得たいという思いもあります。リターンも得たいし、できるだけ多くの人に見てもらいたいという気持ちは当然クリエイターとしてはあるわけです。その思いから言えば、私たちは別に出したくないということではありません。

それに対して契約という話については、現実的に今の日本の環境の中でいいかというと、必ずしも先に全部契約で押さえるような状況ではないというところではあります。しかしながら、先ほどの橋本さんからも実際に権利クリアがなされているということで保証いただきましたし、ビデオでも事前に二次利用の契約をしないものでも、ビデオ、DVDで多々の作品が出ております。それは一つ一つの問題点をクリアしていくことによって、きちんとした作業ができる環境にあると思いますし、放送局や、制作プロダクションは長い年月をかけて、そういう努力とノウハウと、そして原権利者、実演家たちとの関係を築いてきたと言えると思います。そして、それは新たな媒体ができるたびにいろいろなパターンを考えなければいけないということで、ブロードバンド環境の中においては、原則的には一つ一つの権利者と一つ一つ向き合っていくことによって解決できるというのが基本だろうと考えておりますし、実際にできている状況だと思っております。

制作時の契約で全部クリアすることは色々な問題があるとしても、次の媒体で出すときの二次利用の作業をしやすいように、資料を整理することについては、放送局においても10年ぐらいの間、その必要性を感じて努力しています。ですから、恐らく1980年代に比べると、そうした権利の情報はよくそろって残っていると思います。

しかし十分かと言われると、まだ十分なところには行っていないのが現状です。放送局の立場から申し上げますと、放送の第一線で作品を作っている局の社員やプロダクションの方々にとっては、毎日毎日が勝負で、その場で見てもらう方々に何時間後に、場合によっては何十分後に面白いものを届けられるかという勝負をしているので、権利情報を書きとめる暇がない場合も多々あるということです。したがいまして、例えばインタビューを取ったときの相手の住所が取れていないとか、作業をしている間に急きょの編集でどこが変わったかということが全部書ききれていないということは十分にあります。

そうしたものに対してどのように対応するかは、現在個々の放送局、あるいは業界としても何らかの方策がないかと検討中で、それについては単純に放送局だけではなくて、原権利者の団体も含めて協力し合う。色々なデータベースをうまく築きあって、それをお互いがうまく総覧できるようにしていこうと考えています。

そういうことがうまくできるようになれば、将来的には私どものほうで情報だけをお渡しして橋本さんのところで処理していただくというようなことも生まれてくるかもしれません。ただ、それが生まれるためには、やはりある程度新しいメディア環境の中での流れ方がどちらの方向を向いたらできるのかということができないと、お渡しすることはできないでしょう。

現在、一つの例としては、利用者団体協議会というものをコンテンツホルダーと利用者側の団体で作り、権利者団体といろいろな話し合いをしまして、ブロードバンドに出した場合の基本的な処理の原則をまとめつつあります。幾つかの団体との間ではすでにほぼ合意に至っているところもございます。そういうものを業界として作りつつあります。それは権利者側も利用者側もコンテンツホルダーも一緒になって今やっている状況であるということですので、そうした流れがさらに加速すれば、「権利者情報を整理したものをまとめて橋本さんにお投げしますから、今回はそちらでやっていただけますか」、あるいは「今回はこちらで全部整理してお渡ししましょう」という時代が来る可能性もあるのではないかと思います。このようなところまでは徐々に来つつあるという状況です。

どうもありがとうございます。もちろん著作権契約関係の問題としてご指摘くださったわけですが、将来の展望についてまで触れていただきました。

それでは、最後のテーマ3番目ですが、放送と配信事業の将来展望を少しお話ししてみたいと思います。この件につきましては、遠藤さんからお話しいただきましょうか。

放送と通信の根本的な違いは、放送は誰がどう受信しているか分からない。基本的には出版物と同じで、「投げる」ということ。放送や出版がそうであるのに対して、ネットはどういう属性を持っているかというと、誰が何回見たかということは分かるのです。先ほどビジネスモデルがネットワーク型は大きく変わるからリスクが大きい、STB型はビジネスモデルがそれほど変わらないから小さいと言ったのもちょっと似た部分があるのですが、STBでも当然誰が見たかプロファイルを取れる部分があります。これは実は非常に大きな違いです。たとえば、サーバー型放送という話もあります。サーバー型放送を一番進めたがっているのは、NHKさんやWOWOWさんですよね。これはどちらも有料放送なのです。民放は広告で動いているので、ビジネスモデルが変わったら大変だと考えるのは当然だと思うのです。出版社もネットをやろうというときに、そのような葛藤をしてきました。

ただ、外から見てのイメージなのですが、やはりテレビは圧倒的に強いメディアなのです。動画の中でも映画というコンテンツもあるのですが、お茶の間に関しては連続性とか、大衆性とか、興味のない人にまで引っかけるパワーというか、ものすごく強いメディアです。僕は、テレビは自分の強さを再度自覚して、その広告の部分が変わってしまうではないかというところがあっても行ってしまうぐらいのところがないと、変わらないと思います。でも、別に行かなくてもいいではないかという議論もあるのかもしれないのですが、一方で、今携帯電話で例えばテレビと連動するサービスをインデックスさんがやられていたり、今のテレビのままでもそういうことは起きつつある。だったら将来展望の中でおそらく広告というものが大きなキーになってくるので、そこをきちんと押さえる。テレビ局も出版社もメディア側の立場がちょっとあるので、そんな危険なところに行けというのは酷なところがあるのです。そこをちゃんと話題として挙げて、それでも行けるのだという施策をやってあげないと、危なすぎます。

テレビというのはグロスですごいお金を広告に使っている企業があるわけです。雑誌も実はその規模がちょっと違うようなもので、グロスでやっている。もちろん広告代理店は二次利用についてもうまくいく仕組みを考えればいいわけですが、今の「余裕がない」という話と関係があるのですが、そこにそんなに行けない。とはいえ、テーマとして広告はどうなるのか。その部分をちゃんと見つめないと、何しろ民放局のほうが多いので、簡単にはいかないのではないかという気がします。そこを話題にしないといけないのではないかという気がします。

どうもありがとうございます。日本はe-Japan計画でインフラとしては世界最高水準で、ますますこれが進むと。ある意味ではそこに投資があるということですよね。国の施策でもあるのだろうと思います。そのためにはいろいろなコンテンツがそこを利用し、国民が最も欲しい情報を適宜取得できる、こういう文化になるのは国民側で望んでいるのは間違いないことです。それが世界規模でできることも、実は欲しいのです。そうなったときに、なぜそこまで先にインフラを先行させるだけでなくて、コンテンツも同時に作ろうという発想が生まれないのだろうか。場合によってはインフラのほうも協力してそういうことをしようという発想がなぜ生まれなかったのか。この点について、橋本さん、いかがですか。

どのように作るかは別にして、作るというところにもう一度大きなフォーカスが当たるようになると思います。インターネットの草創期に、とてつもなくワイルドでアバンギャルドなものが本当に飛び交っていたのです。大半は人気が出るとそれを配信している人がサーバーを拡張できなくて、サーバーがダウンして配信できない。最初のころはこれを繰り返していました。だから今ここでずっと議論してきているような著作権、あるいは著作物としての商業的な価値の議論の対象外のものが多数流れていたツールだったのだろうと思います。

その部分は今でもそれなりに残っているのかもしれないのですが、そういったサブカルチャー的なものから本当にクオリティの高いブロードバンドというところまでをインターネットが内包しているときに、今の議論がどの部分に該当しているのかということが、重要なことだと思うのです。

そういった意味でいうと、これまでのインターネットを使って流しているもので、例えば地上波、あるいは映画を作るのだと元々意図していたものがどれだけあるかというと、ちょっと違ったのだろうと思うのです。したがって事の本質は、やはりここからもう一度さまざまなコンテンツを作る国になっていくと思うのです。

ネットワーク屋は基本的に家電メーカーの敵なのです。何故かというと、例えばDVDレコーダーが売れていますが、世の中には使われていないハードディスクがあふれようとしているのです。「見ないけれど録画する」という世界になるわけです。それもおかしいと常々思っているのです。つまりエンドユーザーもそうですが、お金をかけるものを、使わないかもしれないけれど取っておくと嬉しいかなというものよりは、実際にコンテンツに使っていただきたい。逆にいうと、産業のあり方もより良い作品を作るというところに全体の目が向くようになっていかないとだめだと思っているのです。

例えば僕の好きな男優さんでジュード・ロウという人がいるのですが、インタビューを聞くと、驚くほど知性あふれる男なのです。「HERO」や「LOVERS」という映画を撮ったチャン・イーモウ監督や、そういう人たちと話をすると、やはりすごい学歴なのです。例えば中国の映像制作の高等教育というのは、国の予算で大学にカリキュラムがあるのです。例えばジュード・ロウはロイヤル演劇アカデミーの出身です。つまりそのことばかりをやっていく高等教育が、日本以外の国には多数存在しているのです。

ですから文部科学省や文化庁の方にぜひご検討いただきたいのですが、全国の国公立大学に仏文科は要らない、需要がどこにあるかというと、やはり映像メディア制作のようなところの学部学科の充実。そうすると実演家も育つ。高等教育の一定期間でそればかりをやるということは、機会として多分この国の若者にないのです。要するに実際に商売として始める前に教育としてそういうものがあることが必要で、別に事業者がお金を使ってものを作るからうまくいくとは全然思っていません。本当に情熱があって作りたいと思う人が作れる環境を用意することが何よりだと思っています。そのために事業者は協力しろというのなら、幾らでも協力できると本当に思うのです。そのぐらいの規模の大きなことを皆さん一人一人がこの国に必要だという思いを持って活動していただくと、ものすごくいいことになるのかなと思っています。作るというのは、そこまでさかのぼらないと充実したものは作れないのではないかというのが率直な思いです。
前のページへ 1234 次のページへ
ページの先頭へ