文化庁主催 第2回コンテンツ流通促進シンポジウム
放送番組は、ブロードバンド配信の主役となり得るか?

2004年12月1日 国立オリンピック記念青少年総合センター(カルチャー棟小ホール)
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パネルディスカッション
上原氏からの話題提供 
中村氏からの話題提供 
橋本氏からの話題提供 
遠藤氏からの話題提供 

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どうもありがとうございます。次は将来的展望について、それぞれ4名のパネリストの方々のご意見があると思いますが、最後にその点も含めましてご意見をまとめていただくことを考えております。今日の話を踏まえたうえで、ご主張と将来の展望などをお話しいただければと思います。

今日のまとめというのは大変難しいですが、まずは放送事業者の立場としての話をさせていただきます。放送事業者としては、今大きく三つの立場だと思います。

一つは放送事業者として放送をしているということです。そこで放送事業から広告収入を得て儲けている。そのためにコンテンツを作ったり買ったり発注したりしているという状況です。 もう一つはコンテンツホルダーとしてそれを利用して事業に活用して儲けている立場。これは放送事業者として最近大きく出てきている。これがいわゆる二次利用とかライツビジネスなどと言われている世界だと思います。

そしてもう一つは放送を通じていろいろなコンテンツを作ってきた作り手として、新たな時代にどういう作り手としてあるのかという部分もまた放送事業者としてあると思います。それは別に放送番組以外のものでも今まででも、ビデオパックを作ってきたこともあるわけですし、その中では私どもがブロードバンド用のオリジナルコンテンツを自分たちで作っていく。あるいはブロードバンド配信事業者と共同して作っていく。そういうことも大いにありうる。

大きく言ってこの三つの立場があると思います。その三つの立場の中で我々は動いている。その中で言えば、ブロードバンドとの向き合いは今後ますます重要になってくると考えています。

そして、「放送は非常に強い力を持っている」と遠藤さんはおっしゃられました。私もその部分は確かにそうだと思います。それはなぜかというと、やはり社会的な役割として皆さんにすべての情報を投げる社会的媒体として一番皆さんが使いやすい媒体だからだと思っております。それを担っているから強くいられる以上、その立場にいる者としては、媒体を担っていく責任を考えていかなければいけない。ということで、もしもブロードバンドが今後すべての媒体をその上に乗せていく基盤になっていくのならば、やはりそこへの対応を積極的に考えていく責任があるだろうと考えています。その部分はこれからの宿題なのだろうと思っています。

私個人として思いますのは、やはり非常に強い力を持つ媒体として視聴者に向かってきた私どもとしては、ブロードバンドが本当にすべてのものを通す土台になるのならば、その中に流すインフォメーションやエンターテインメントについてどういうものを供給できるかという次を考えていくこともまた私どもの責務であり、またそこに私どもの生き残るチャンスが多大にあるのではないかと考えております。

どうもありがとうございます。中村さん、どうぞお願いします。

私は音楽事業者の立場からの考え方で説明させていただきます。従来はアーティストやタレントを歌手や俳優という形で固定概念でとらえておりました。したがってビジネスの範囲も、レコードや映画というくくりでとらえていた。ところが最近はブロードバンドももちろんそうですが、傾向としてはアーティストはやはりアートを持つ人だという認識から、ビジネス的にはそれをどうメディア化していったらいいのか、そのビジネスを構築していくためにはどうするかということを音楽事業者としても真剣に考えざるをえない状況になってきたと思っています。

したがいましてアーティスト、タレント、実演家のコンセプトに合った各種のメディアを選択し、メディア化や商品化することは当然考えられますし、考えております。

情報化社会におけるアーティストビジネスは、まとめて言いますと、アーティストやタレントの芸や才能をメディアを活用して情報化して商品化すると私どもは理解しております。したがいまして、共存共栄はより以上に図っていかなければいけない。これはもちろんのことですが、これから先、いろいろな作品をこしらえていくというようなことが重要であることはもちろん間違いありません。我々がそれにどのようにすれば協力できるのかというポイントを考えたときには、やはり情報の共有化は音楽事業者にとってもかなり必要ではないか。従来の形でいきますと音楽事業者がいろいろな情報を集めて、そこで先取りした者が勝ちだというようなことでした。これはこれから先もあると思いますし、重要なことだと認識しておりますが、そこをいわゆるアーティストビジネスということでとらえるならば、今後の展開がさらに開けてくるのではないか。つまり、ブロードバンドについて、我々が安心して媒体と認知できるようなものにぜひなって欲しいし、その辺のところの理解を増すための努力をさらにお願いしたいということが、私の希望です。

どうもありがとうございます。それでは、橋本さんお願いします。

ブロードバンドに何か意味があるとすれば、それがエンドユーザーから支持されることだと思います。先ほど「ガンダム」のケースでお話がありましたが、ユーザーがどの手段でそれに接するかということを自由に決めることができる。逆にいうと、いろいろな選択肢の中から「この形で私はこれを見る」と、その選択肢の幅が広がることは僕は圧倒的な善だと思っています。したがって、ブロードバンドが普及することによって、「ブロードバンドを通じて私は見たい」という人に見たいものを届けたいということを実現することが事業者側としての私の立場であり、その実現に努力するということだと思います。結果としてそれがエンドユーザーにいちばん信頼されて、権利者の皆さんにも満足していただけるような仕掛けでブロードバンドを伸ばしていくことになるだろうと思っています。

どうもありがとうございます。最後に遠藤さん、お願いします。

不正コピーについて全然出なかったので、一言だけ。デジタルというと不正コピーという話があって、STBとPCとどちらが安全かなど、いろいろな議論があります。米国の音楽配信が非常にいい事例になると思うのですが、P2Pで相当違法ファイルが流れている。日本も今日時点で映像も含めてかなり流れていると思うのですが、米国では、有料で良いサービスが幾つも始まったのと、去年の秋から個人に対して訴訟するという話になってきたこともあって、状況は一変しているということが起きています。要するに、流してやれば、無理してキャプチャーして流す人も減ってくるということです。

それからもう一つ、技術的な問題で、電子マネーがなかなか普及していないところがあります。ただ、個人的には今後進むと思っています。電子マネーというのはお金のハンドリングコストを下げることと、安全性を上げるために作っているのです。要するに、今のお金やクレジットカードよりも電子のほうが安く安全に利用できるということでやっているわけです。それと同じことが、映像に関しても実は言えるはずです。もはやリアルタイムで電子透かしを入れることもできるようになってきていますし、IPv6もそういう部分も持っておりますので、デジタルにしたからといって、必ずしも違法流通にどんどんつながっていくわけではないと思います。

もう1点は、放送そのものをパッケージと見ていいかどうか分からないのですが、パッケージという発想の歴史は実はそんなに古くなくて、ネットワーク的なノンパッケージメディアにまた戻っていく大きな流れがあるのではないかと思います。日本人はコレクションが好きだから、CDやDVDにどんどんコピーするのだというような話もありますが、非パッケージへの流れの中に全体が動いているのかなという気がします。

そのときにネットワークにどうかかわっていくか? 日本の今の産業界にとって非常に気になっている会社は、特に外資系ではDell、Amazon、Googleだと思います。ネットのパラダイムを100パーセント、120パーセント利用して成功している会社です。僕のプレゼンではネットワークに行くのか、ラインに行くのか、「どちらがいいです」とは言いませんでした。どちらに行くにしろ、ITというと言葉は簡単なのですが、ネットのパラダイムをしっかり吸収しないとまずいかなと思います。

どうもありがとうございます。最後に私のほうから、今日の整理を少しつけるということになっておりますので、お時間をちょうだいいたします。

一つ出ましたのは、放送とブロードバンドにコンテンツを対応変化させ利用していくという工夫をすることによってシナジー効果が上がる考えはもっともなことだと思います。これは個々の案件ごとにやらなければいけないわけで、難しい実務上の問題がありましても、この部分については恐らく進んでいくのだろうと思います。これは全く市場の競合、競争関係にないところですので、そういうノウハウをどんどん出し合っていただいて、シナジー効果を上げていただければいいということになります。

もう一つのテーマですが、競争関係にあるところは率直に認識しなければならないと思います。それは、現行の放送と、それからSTB型のブロードバンド配信との関係では、競合する部分がある。それを大きくとらえるときに、どういう費用負担を誰がしてブロードバンドの市場を育てていくのかという議論をしなければならないのだろうと思います。それには情報、メディア政策に関する社会全体の哲学のようなものが必要なのではないかと感じました。

ここ20年間ぐらい著作権についての議論が盛んになっておりますが、日本の社会の中にはどうしても一つの考え方があるように思います。それは、一つはハードウェアの産業界と、文化を作る創作者の立場との間で、経済政策的な視点で著作権をより効率的に利用するべきか否かという点において基本的な考え方、立場を異にして、何かあるとその対立があるから産業が進まないというような議論があったと思います。

一つ顕著な例を言えば、昭和60年代のハードとソフトとの関係で、ソフトをどう保護するかという問題でありましたし、それからコンテンツビジネスを組み立てるときの契約関係いかんということも常にあることでありました。リバースエンジニアリングをどの範囲内でできるかというようなことについても、実は根底は同じようなところにあるのだろうと思います。

ところが、尾崎教授が取りまとめてくださった検討会の報告(※)、それからその後の当事者が集まった会合に出てみますと、やはり共存共栄だということは認識ができていて、大変いいことだろうと思います。それは日本全体のためにいいことだろうと思います。日本の文化を育てるにはやはり新しいメディアも必要だ、それからどうしても放送局、放送事業者の圧倒的なコンテンツの制作能力も必要だということは、みんな認識していると思います。この点で、まさに何か協力しあう関係を作る。ただ、抽象的に協力しあう関係といっても仕方がないので、著作権法をどう処理するかということの視点をもっと具体的に出して、1ステップでも進めていくということだと思います。

上原さんから答えをいただいたように思いますが、手間やコストはかかるけれども、やはり権利情報を何らかの形できちんと処理しなければならない。場合によると各局ごとにデータベース化しなければいけないのかもしれません。そしてそのためのコストをどうするかを真剣に考えないといけないのだろうと思います。それから、それぞれのコンテンツをいろいろな場面で使えるように、あらかじめ創意工夫をしなければならないということも検討されなければなりません。この一つとして広告における利用もあるのかもしれませんから、そういう点も含めて権利処理をあらかじめ考えておくということが必要であると思います。

ぜひインフラと著作物、ハードとソフト、こういう関係でとらえるのではなく、これらを一体として日本全体の技術と文化を世界に出してもらいたいと考えます。そしてこの点から最も強い国になっていただきたいと思っております。コーディネーターの感想だけで大変恐縮ではありますが、このように最後に取りまとめさせていただきます。今日はどうもありがとうございます。4人の方々、どうもありがとうございました(拍手)。



※過去の放送番組の二次利用の促進に関する報告書は以下のURLから入手可。
https://www.bunka.go.jp/1tyosaku/pdf/kakohousou_houkokusho.pdf
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