文化庁主催 コンテンツ流通促進シンポジウム「著作物の流通・契約システムに関する研究会」の成果報告
コンテンツビジネスの未来は輝いているか?

2004年6月28日 国立オリンピック記念青少年総合センター(カルチャー棟大ホール)
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パネルディスカッション
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澤 [ マーケティング ]
資料2:マーケティング
次のテーマは「マーケティング」です。こちらも各グループで、マーケティングの重要性について様々な形でご意見いただいております。
例えば、「有識者の評価による価値づけが必要ではないか」、「ユーザーニーズを十分に理解している人による評価」、あるいは「一般ユーザーによる評価の仕組みを提供すべきではないか」。


撮影:小池 良幸
ID:HJPI320100000590
あるいは「ユーザー発想のビジネスモデル構築」、「利用形態、流通経路の組み合わせごとに価格設定を変える戦略」、あるいは「制作側と流通側が収益確保のためのアイデアを共有する一気通貫の仕組み」というように、ユーザー発想、あるいはユーザーニーズを明確に把握した形でのコンテンツの評価が必要ではないか。

このように、大きな方向性としては各グループ、同じような検討結果になっております。

佐々木さん、このマーケティングという観点からお願いいたします。

佐々木 モバイルにおける、いわゆる「マーケティング」というのは、もう既に始まっていまして、レコード販売に先行してネット配信するとか、携帯で小説を発表して、それで評価が定まったところで、ちゃんとした小説本を出版するとか、色々な形で出てきています。

我々は、才能のある原石を磨いていく「プロセス」をモバイルの中で完結させていくにはどうしたらいいかという議論をしました。そういった意味で、まず一般ユーザーがどう評価するか。それを専門家なり、もしくはある一定のオピニオンが評価していくというプロセスを経て、その才能、そのコンテンツが面白いか面白くないかを評価するということは、現状、モバイルで十分できるわけです。そういう結果も色々出ています。

じゃあ、そのアーティストなりクリエーターが本当に才能が有るのか、無いのか。若しくは、プロになる、プロにしていく「プロセス」というものを、十分評価してあげられるかというところがまだ無いわけです。

モバイル社会から生み出した全く新しいクリエーターを、育てていく「プロセス」をモバイル上に構築していくことをマーケティングの重要な役割の1つとし、そこから色々なコンテンツが生まれ、経済的な評価を得、きちんと印税がもらえるようになっていく。プロとしてデビューするひとつのきっかけにする。そういう仕組みをモバイル上に構築していかなければいけない。そういう議論をしました。

澤 Bグループの森田さん、いかがでしょう。

森田 ユーザー発想ということを考えたときに、幾つか非常にアナログな部分についても色々な検討を加えました。ユーザー発想で考えた時のマーケットのニーズ把握を誰が一番できるのかといった場合に、例えば、カリスマ店員のいる小売店では、そういう店員は非常に顧客のニーズをうまく捉え、あるいは仕掛けるということを日常的に行っていて、マーケティング機能を担っている。米国では、そういったやり方で非常に流行っているCD販売店が存在するという指摘が委員からなされましたし、日本でも「取次」から送られてきた本を単に売るのではなく、店主が工夫を凝らし客に勧めている、ポップなどを有効に活用しているという例がたくさんあるわけです。細かいニーズの吸い上げ、あるいは「仕掛け」ということをやっている。そういう「アナログな仕組み」にも着目すべきではないかという意見がBグループでは出されました。それが、「次々世代」において技術の進展とともに、どう反映されていくかが1つのポイントではないでしょうか。

また、マーケティングと言うと、それが「プロデュース」と独立したものと捉えられがちです。例えば、今のハリウッドビジネスを見ると「クリエーターがいて、プロデューサーがいて、ディストリビューターがいて」という構図が崩れている部分があります。エージェントが重要な役割を持っているわけです。米国でいうと、「CAA」、「ICM」、「ウィリアム・モリス」といった巨大エージェントがあるわけで、彼らがクリエーターと協同し、クリエイティブからビジネスへの変遷プロセスをマネジメントする会社を作っているわけです。

面白いものとしては、例えば、俳優のトム・クルーズがポーラ・ワグナーというCAAの優秀な女性エージェントと組んでインデペンデント・プロダクションを立ち上げています。そうすると、トム・クルーズのパートナーであるワグナーとしては、クリエーターである、あるいはタレントであるトム・クルーズの価値をいかにアーティスティックに、あるいは経済的に最大化し、かつ、それを継続するか、という観点から様々なマーケティングを考えていくのです。これはプロデュースとマーケティングを考えていく一つの先進的事例と言えるでしょう。

また、単純にマーケティングということではなく、誰の視点から見たマーケティングかということも重要ではないかと思います。ユーザーの観点に立ったマーケティングもあるでしょうし、クリエイティブサイドに立ったマーケティングもあるので、「次々世代」においては、より細かく、マーケティングをどの立脚点から見るかということも大事ではないでしょうか。

澤 久保田さん、いかがでしょう。

久保田 今、森田さんがおっしゃったとおりだと思います。

ゲームの場合、そのジャンルは幅広く、日本人のように、非常に精緻で細やかな、ロールプレイング・ゲームを楽しむところから、アメリカ人のようにアクションゲームでガンガン遊ぶ方が面白いというところまである。

そういう意味で、マーケティングをきちんとやれば、ヨーロッパ向けのゲームソフト・アメリカ向けのゲームソフトというものをきちんとマーケティングすれば、それによって具体的な知恵はいくらでも出てくるという話をしました。

また、制作者側と流通側の利益確保のためのアイデアを共有する一気通貫の仕組みというのは、これは同じ産業で同じ飯を食っていく方向ということ。事業主としてクリエーター側に立つか流通側に立つか、これは大きな選択肢であると思いますが、どちらがなくなっても困るわけです。当たり前の話ですが、コミュニケーションを持って一気通貫の仕組みを一緒に作る中で、次を見いだせるアイデアが出るのではないかという議論をしました。

澤 斎藤さん、お願いします。

斎藤 最近、私の周りで中年女性の「冬ソナ」ファンという話が出ます。「あなたはBSで見たの」、「いま、NHKで見ているの」、「DVDなの」、「え、韓国は携帯で見られるのよ!!」、「いや、インターネットの韓ドラで見ているの」・・・。そして、「この差は何なの?」という話になりました。収入、時間、嗜好、まさに「冬ソナ」ファン一つとっても、これこそがユーザーをどう見るかという代表例だよねということを話しました。

おそらく、携帯でビジネスを完結しようとしますが、なにか違うという感じを受けると思います。わたしは「市場」は生まれるというふうに思っています。メディアやツールによって、どれだけコンテンツがそれに「乗る」か、それがクロスした中で「市場」を作るマーケティングの妙味だと思っています。

この「冬ソナ」の利益還元がどういうふうになされているかについて、まだ私自身ここでお話しできるほど勉強してませんが、マーケティングが、クローズドの中での例えばサイトの中での流通だけではなく、他メディアとの連携における著作権の壁をどれだけ外していけるか、そこへの挑戦をすべきだと思います。
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