
北海道庁旧本庁舎は、史跡指定地内で基礎免震工法が採用できないなど、耐震改修工法の選定における制約条件が厳しいことから、施工者の固有技術を活用した合理的な設計を行うことができる「高度技術提案型総合評価落札方式」によるデザインビルド方式を採用した。技術提案項目は耐震補強方法のほか、素屋根及び仮設見学施設の設置方法などがあり、提案により後年復原の中央八角塔を切り離して仮設見学施設内に移設することで間近での見学を可能としたほか、素屋根の高さを抑制してコストの縮減が図られた。
北海道開拓100年を記念した事業の一環で昭和43年(1968)に行われた工事では、内部を火災復旧後の姿、外観を創建当初の姿に近づける推定復原が行われたが、工期と金銭面でかなわなかった工事もあった。令和の修理工事は、現代の技術を利用し古い材料を傷めることなく、昭和43年工事の想いを継承した復原工事を可能とした。天井のメタルシーリングは、復刻版ではあるが火災復旧時と同様にオーストラリアから輸入をし、現在型が無いデザインは3Dスキャナーとプリンターで作成した樹脂型を海外に送り、材料の破損や紛失というリスクを避けた。中心飾の復原は、現在は国内外どちらもプレス加工での製作が不可能とのことから、アルミ鋳造での復原となり、取り外すことによる破損のリスクを回避した3Dスキャナーとプリンターによる樹脂型で国内企業のベトナム工場でVプロセス鋳造法にて製作を行った。
本工事で耐震補強工事に採用したプレストレス補強は、拡底削孔から定着までの工程を煉瓦壁内で完結することを可能としている。これまでのように地面や壁の掘削を伴う真横からの定着作業を不用としたことで、史跡を含めた文化財への影響を最小限にとどめることができた。
文化財への採用は本事例が2例目だが、新たに日本建築センターで性能評価を取得したことで、煉瓦建造物の耐震診断および補強設計を保有水平耐力計算で実施することが可能となった。また、本事例により、煉瓦壁の削孔高さ及び孔内での拡底施工の実績が9mから22mに更新された。