香川県007

香川県農協下笠居支店

  • 1966年竣工
  • 設計/富岡建築研究所
  • 施工/合田工務店
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造 地上2階
  • 用途/商業・事務所建築
  • 所在地/香川県高松市生島町

⾼松市の⻄部、市⽴下笠居⼩学校の北隣に位置する RC 造2階建の農協である。昭和41(1966)年竣⼯時は下笠居地区を対象とした単⼀の農業協同組合(下笠居農協)であったが、数度の合併の後、現在は⾹川県農業協同組合の下笠居⽀店となっている。
床⾯積は1階約530㎡、2階約300㎡である。1階は東⻄⽅向を⻑辺とする⻑⽅形平⾯で東を正⾯とする。中央に⽞関ホールや2つの階段室等を設け、その中央部を挟むように北側に⽇⽤品を販売する購買店舗、南側に⾦融店舗を配する。2階は、L 字型の平⾯となり、組合員活動の場として、⼤会議室、舞台兼⼩会議室、役員室兼⼩会議室、⽣活改善調理実習室を設ける。⼤会議室は、東を正⾯にすると会議室として、⻄を正⾯にすると舞台の客席として利⽤できるようになっている。さらに舞台となる和室は単独で⼩会議室としても利⽤できるようになり、また、奥の役員室兼⼩会議室とは、襖を開閉することで、2室を⼀体的に利⽤することもできる。さまざまな活動を想定して可変性のある空間となっている点が実に興味深い。⽣活改善調理実習室は、台所を想定した流しが5ヵ所設けられており、その名のとおり農村の⽣活改善に向けた、洋⾷の調理実習などが⾏われていたと推察される。全体として、2階部分は⼤きな改変はされておらず、竣⼯当時の様⼦をよく留めている。
外観は、1階と2階部分を分断するように、先端で弧を描く庇を周囲に廻らせているのが特徴的である。この庇は、逆梁構造となり、外壁⾯から3mも持ち出されている。庇を境に、 2階部分は妻壁を傾斜させ、桁⾏⽅向のパラペットに勾配の付いた庇を付加し、それらを繋ぐことにより全体が⼤きな屋根に包まれるかのような意匠となっている。
当農協は、農村の近代化を⽬指す中で計画された農協建築であり、⽐較的⼩規模ながらも、外観、平⾯計画、内部の詳細にわたりデザインされた作品として評価できる。
なお、設計者は同時期に県内東部の⼤内農協会館[昭和42(1967年)1⽉竣⼯]の設計も⾏い、こちらも⼤ぶりな先端で弧を描く庇を⼤々的に⽤いた作品となり、外観において共通点が⾒られる点を指摘しておきたい。