香川県014

中野天満神社

  • 1969年竣工
  • 設計/富岡建築研究所
  • 施工/河辺建設工業
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造 地上3階 銅瓦葺
  • 用途/宗教建築
  • 所在地/香川県高松市番町五丁目

高松市中心部の天神前交差点前に位置する、RC造3階建の神社である。3階に本殿と拝殿があり、交差するRC造の変形切妻屋根は銅板葺である。神社の創建は不明だが、菅原道真の霊を京都北野天満宮から勧請した際に、北野の「野」と所在地の香川郡中ノ村(現・高松市中野町付近)の「中」を合わせて「中野天神」あるいは「中ノ村天神」と呼ばれていたと伝わる。17世紀前半に生駒氏が現在地に奉遷し、その後は高松藩歴代藩主の保護のもと社殿・社地が広がり、最盛期の敷地は現在の香川県議会議事堂、香川大学教育学部附属幼稚園高松園舎にまで及んだと伝わる。境内とその周辺には藩校・講道館や聖廟が作られ、藩学振興の拠点でもあった。明治維新後も地域の信仰を集めたが、昭和20年の高松空襲で全焼にあい、社地を縮小して昭和44年に再建された。設計者は富岡建築研究所(富岡茂)、施工者は河辺建設工業株式会社である。
1階が駐車場(36台)、2階が社務所、3階が本殿・拝殿という構成で、最高部に位置する本殿の象徴性を高めている。本殿・拝殿は縦横に交差する変形の切妻屋根で構成され、単純化されたデザインの千木と相まって、斬新な印象を与えている。神社の東端の階段を上がると拝殿へ続く階段前のデッキへと至る。そこには戦災を逃れた灯籠や狛犬、鳥居が配され往時を偲ばせる。2階には社務所のほか玄関ロビーや会議室、40畳敷きの広間、それに続くホールなどが併設され、屋上庭園がある。かつて広間では結婚披露宴が行われ、会議室は時間貸しもされていた。現在でも駐車場の経営や店舗の賃貸が行われており、設計の段階から「神社の経営」という観点が盛り込まれていたことは特徴的である。昭和40年代半ばに宗教的役割と世俗的な経済的自立の両立を目指しているという点は興味深く、都市型宗教建築の一例として評価できる。