香川県015

川島猛アートファクトリー

  • 1969年竣工
  • 設計/TAS建築事務所
  • 施工/清水建設
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造 地上6階
  • 用途/文化施設(元 産業施設)
  • 所在地/香川県高松市亀水町

⾼松市の⻄部、⻲⽔湾に⾯して建つ⽂化施設である。敷地は海沿いにあり、周囲を⽊々に囲まれ、前⾯には、瀬⼾内海の島々が広がる環境に⽴地する。
当初、⼩型精密モーターの製造を得意とするオリエンタルモーター(株)の⼯場として建築された。⼀⾒、交通の便も悪く、⼯場⽴地にふさわしい場所とは思えないが、従業員の労働環境を整え、また、外国⼈バイヤーの⼯場⾒学なども想定し、当地に海の⾒える⼯場として、操業されたものであった。
その後、⼯場移転に伴い、建物の利活⽤策を検討していた会社側と、新たな制作拠点を模索していた、ニューヨーク在住の芸術家川島猛⽒を⾹川県が仲介する形で、平成27(2015)年、川島猛アートファクトリーとして⽣まれ変わった。
建物規模は、RC造地上6階建、延べ⾯積約4700㎡である。⼯事は2期に分けて⾏われ、まず第1期として、2階までの部分が、第2期として3階から6階までが建築された。さらに、第3期として、3階及び5階部分の⼩規模な増築も計画されたが、実現には⾄っていない。
⼯場操業時の平⾯は、主に1、2階を事務部⾨、3階以上を⽣産部⾨としていた。⽣産部⾨の3、5、6階には直接外部より乗り⼊れが可能な材料搬出⼊⽤の出⼊⼝が設けられ、その地形を⽣かした⽴体的な動線を持つ⼯場となっていた。現在は、6階に⼀般来客者⽤の出⼊⼝を設け、同フロアをギャラリーとして開放している。
階段、エレベーターなどの縦動線については、建物中央部、南北2ヶ所のコアに集約され、それは、後述する外観上の特徴にも繋がっている。
⽴⾯は、1、2階部分をほぼ斜⾯に埋め込み、3階以上の階を⼤きくセットバックさせることで、建物全体のボリューム感を軽減している。東⾯の開⼝部については、1、2階をカーテンウォール、3階以上を全⾯、床から天井まで続く⽔平連続窓とし、眺望が図れるよう計画されていた。⼀⽅、コア部分は1階から6階までを貫く南北2本のタワーとなって現れ、壁の多いタワー部分が垂直線を、その奥に控える建物本体が、⽔平線を強調し、独特の外観を形作っている。なお、当初計画において、タワーどうしをブリッジでつなぐ案も検討されたが、これは実現には⾄っていない。
本建物は、瀬⼾内海や五⾊台の⼭々に囲まれた周辺環境を考慮し、また平⾯的にも、⽴⾯的にも敷地の傾斜を⽣かした計画が特徴的な作品である。さらに、⼯場としての役割を終えた後も、コンバージョンが⾏われ、現在も使い続けられている点は、継続性の観点からも評価できるものである。