香川県017

橘地区改良住宅D棟

  • 1975年竣工
  • 設計/川口正男
  • 施工/鍛冶工務店
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造 地上5階
  • 用途/住居建設
  • 所在地/香川県小豆郡小豆島町橘字内間甲

橘地区改良住宅は、⼩⾖島の東部の海に⾯した集落地域内に建つ中層型共同住宅団地である。昭和49(1974)年に⼩⾖島各所に⼤きな被害をもたらした台⾵・豪⾬災害(⼭津波、⼟⽯流、堤防決壊等)の復興事業として、旧内海町(平成18年に池⽥町と合併し⼩⾖島町)が整備した住宅である。
背後に急峻な⼭を控え、⼊江に⾯し平地が少ない地形環境の中で、⺠家が密集した地域景観の中に、鉄筋コンクリート5階建ての17棟が建てらている。豪⾬によって背後の⼭から⼟砂が住宅に流れ込み、多くの被害者が出たことを教訓に整備されたもので、災害の記憶をまとめた「⼩⾖島 災害の記憶」(平成26年11⽉発⾏)には、「防災拠点住宅に位置づけられた新しい公営住宅は、2〜5階建ての中層住宅とし、1階部分は⾼床式にして、万⼀の⼟⽯流に耐えられる構造とした。また、いくつかの住宅には屋上部分に集会場を併設し、⼊居者だけでなく、周辺住⺠の避難場所としての機能を持たせた。」と述べられている。
本住棟は、災害によって住宅を失った住⺠のために、整備された住宅で、上述の公営住宅と位置付けが異なるが、5階建の中層建築物で、1階を⾼床(ピロティ)としている点は共通している。(なお、5階には「共同作業室」と名付けられた室が設けられているが、「周辺住⺠の避難場所」として整備されたものか、また現在当該機能を有しているかは不詳である。)
建設当初は、和室(6帖間1室、4.5帖2室)、台所、浴室、便所の平⾯構成であり、昭和63(1988)年に和室(6帖)の増築が⾏われた。南⾯に設けられているバルコニーはアルミサッシが取り付けられ、インナーバルコニー化している。
⾹川県は、⽐較的災害が少ない地域(⾃然災害被害額の全国順位)ではあるが、⼩⾖島を襲い、多くの死者・負傷者・家屋被害を出した昭和49,51年の台⾵・豪⾬災害の復興事業として整備された本建築は、地域の実情を踏まえた防災まちづくりに資する建築事例として評価したい。