香川県018

浴日館休憩所

  • 1977年竣工
  • 設計/香川県土木部建築課
  • 施工/石川工務店
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造 地上1階
  • 用途/公園休憩所
  • 所在地/香川県観音寺市有明町

観⾳寺市の北部、燧灘に⾯する琴弾公園内に建つ休憩所である。琴弾公園内には銭形砂絵があり、公園東側の琴弾⼭にある象ヶ⿐岩銭形展望台から銭形砂絵を⼀望することができるのだが、その軸線上に浴⽇館休憩所は配置されている。
鉄筋コンクリートラーメン構造平屋建て、⼊⺟屋造りの建築である。屋根はアスファルトシングル葺きで、棟を⽇本⽡で納めている。軒は主体構造から2.7メートル張り出している。柱、梁、⼩屋裏はコンクリート打放し仕上げで、四隅の柱間に⽊製格⼦が設えてある。床は周囲の地盤⾯より700㎜程度の⾼さで、主体構造から2.0メートル張り出している。3スパンラーメンの単純な構造である。床はモルタル磨き仕上げ、天井はコンクリート打放の梁間に⽊製の格天井が設えられている。軒裏はコンクリート打放で、段差が設けられている。
この場所にはかつて明治中期に⽇⾚総裁来県の際に建てられた、しの葺き1棟、檜⽪葺1棟、付属棟からなる建物があり、その時、⽇⾚総裁⼩松宮彰仁親王が「⻑潤浴⽇」の四⽂字を書かれたことから「浴⽇館」と名付けられた。その後、⻑く利⽤され親しまれてきたのだが、昭和52(1977)年に⽼朽化に伴い取り壊され、その跡に「浴⽇館休憩所」が建てられた。琴弾公園は県⽴公園であり、建物は⾹川県が所有、管理している。
設計者は、⾹川県⼟⽊部建築課、施⼯は株式会社⽯川⼯務店である。旧建物の取り壊し後、昭和52(1977)年3⽉に竣⼯している。その後、平成6(1994)年に屋根葺き替え⼯事、平成20(2008)年にスロープ設置⼯事が⾏われている。これらは、⾹川県で保存管理している原設計図書、施設台帳で確認できた。
園路から東に20メートルほど奥まった松林の中にあり、軒の深さと床の張り出しにより軽やかな浮遊感を感じる建築である。正⾯桁側からみると3スパンの両端は⽊製格⼦で囲われて内部の様⼦が⾒え隠れするつくりである。中央のスパンは解放されており建物東側の庭園と琴弾⼭の裾を⾒通すことができる。妻側は1スパンであるが桁側と同様の作りとなっている。⽊製格⼦に囲われた内部にはベンチが据えてあり、訪れた⼈々が憩う空間となっている。柱、梁をコンクリート打放仕上げとしているが、壁⾯の格⼦、梁間の格天井の⽊との調和がとれ、落ち着いた空間となっている。軒は少しそりをつけており、2.70メートルの張り出しの1.80メートル程度の位置で段差を設け、軒先の⾒附⼨法を⼩さくし、軽やかな意匠となっている。
調査⽇には数⼈の⽼⼈が⼊れ替わり⽴ち替わり談笑しており、暫くすると縦笛の練習に訪れる⽅がいた。管理状況も良く⾏き届いており、これからも愛され続ける建築であることを願っている。