香川県025

灸まん美術館

  • 1990年竣工
  • 設計/磯野建築事務所
  • 施工/富士建設
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造 地上2階 本瓦葺
  • 用途/文化施設、商業・事務所建築
  • 所在地/香川県善通寺市大麻町

善通寺市南部、南北に⾛る国道319号線沿い東側に位置する。国道沿いに駐⾞場を配し、敷地東側に⻄⾯して建つ。建物は美術館、貸ギャラリー、喫茶店として建設当初から変わらず使⽤されている。鉄筋コンクリート造2階建、屋根はアスファルト断熱防⽔の陸屋根の他、ポーチ屋根、パラペット部分は本⽡葺、外壁は漆喰調厚膜型樹脂塗装仕上げである。
地元の芸術家・和⽥邦坊と陶芸家・⼤森照成の業績を顕彰する⽂化施設として、平成2(1990)年に建設された。設計は有限会社磯野建築事務所、施⼯は富⼠建設株式会社。平成29(2017)年にトイレを和式から洋式に変更する改修⼯事が⾏われている。
外観は鉄筋コンクリート造でありながら、和の建築の意匠を取り⼊れた外観が印象的な建物である。エントランスポーチの軒先は低く抑えられ、落ち着いた印象を持たせている。外壁は漆喰調に⽩く、パラペット部分に⽡を葺き、⽡葺の屋根は起りがつけられている。軒先の⽡には《灸》の字が彫られる。建物は中庭を中⼼に和⽥邦坊画業館、⼤森照成陶芸館、企画展⽰室、ロビー及び談話室で構成されており、エントランスポーチの格⼦状の⾨から中庭に⼊り、外周の回廊より各室に⼊る。中庭は屋外展⽰のスペースを兼ね、⾳楽イベントや茶会などにも利⽤され、また、外壁の⽩い壁は映像を映すスクリーンとしても利⽤される。企画展⽰室は中庭と⼤きなガラス⾯で仕切られており、中庭を介して遠くに空や琴平の⼭の景⾊を望み、内部と外部の空間が視覚的に⼀体となって広がりを感じる⼯夫がなされている。天井にはピラミッド型のトップライトが配置され⾃然光を取り⼊れている。展⽰だけでなく、レクチャーホールなど様々な企画に対応できる部屋となっている。和⽥邦坊画業館は中央吹抜のトップライトから⾃然光を取り⼊れた空間となっており、吹抜を中⼼にスキップフロアにより4つの展⽰コーナーに分けられ⼀巡できる。あらゆる⾓度から作品を鑑賞し、また、⾃然光により時間毎の⾒え⽅が変わることで多様な鑑賞体験ができるような意図がある。
地域住⺠には喫茶店として認識されていることもあり、美術館としてだけでなく多様な利⽤⽅法に対応できる施設として地域に馴染み親しく利⽤されている建物であり、⼩規模ながらも空間の広がりを感じさせる意匠に優れた建物として評価できる。