香川県029

MAYUMIYAの工房

  • 1999年竣工
  • 設計/アルキービ総合計画事務所、グッドデザインスタジオ、MAYUMIYA
  • 施工/香南建設
  • 構造形式/木造 地上2階 桟瓦葺
  • 用途/アトリエ
  • 所在地/香川県高松市十川東町

MAYUMIYAの⼯房は、⽵や古⽊、⼿漉き和紙などの⾃然素材を扱った作品を作り続ける造形作家・森⽥真由美⽒のアトリエである。⾼松市内にあったアトリエが⼿狭になったこと、⼤きな作品に取り組むことが増えてそれを解消するために、⽒の実家と⺟屋に隣接させ⼯房を建築した。場所は、⾼松市郊外、屋島南東の⼗川東町のなだらかな平野浮かぶ⼩⾼い丘の頂部にあり、当初は柿畑であった。周辺は、⽥畑と外⼭池をはじめ、多くのため池が⾒られ、板壁・⽡屋根の⺠家が讃岐の⼭々を背景にして静かに散在している。この建築の機能としては、作品・資料の収蔵機能・制作の場としての⾃由な場・お客様をもてなす茶席の場を持ち、同時に作品発表の場でもある。建築設計は、旧知の仕事仲間の3⼈(久保清⼀・⾹川眞司・森⽥真由美)のコラボレーションにより進められている。平⾯計画では、⽐較的⾃由度の⾼い従来の⽇本⺠家に⾒られる⽥ノ字型プランの融通性を増幅させ、間仕切り壁の無い無柱空間を⽬指して計画された。主屋は、梁間11.52m桁⾏14.56mあり、渡り廊下を経て洗⾯脱⾐・浴室の離れで構成されている。⼯房では、空間の制約を緩和するために、外部との連続を透過性の⾼い⽵格⼦の⼤窓や、ガラス引き⼾を採⽤している。それらの⾃由を⾼めるものとして選択された構造が、⼩断⾯集成材⽅杖ラーメン構造である。これにより最⾼天井⾼さが9mあり、全体を覆う⼀室空間となり、外周部以外の構造柱・耐⼒壁がない構造となり、構造と分離した開放的な空間を実現している。外部と内部を繋ぐ出入口は、どの格子戸でも成立する。限定された玄関は持たないが、駐車場からのアプローチの関係で、北側の格子戸から来客を迎える様にされている。また、⼤切に地域⽂化を継承したい思いのもと⾃然素材の活⽤という視点ある。切妻の屋根には、いぶし⽡を再度800℃の低温で焼き豊かな表情を醸し出した和⽡、外壁にはベンガラ塗りの徳島産の杉材、森⽥⽒が⽤意した鉄粉と敷地の⼟を混ぜた円形和室の⼟壁、タタキ、⼿漉き和紙を⽤いた照明や、⽵のオブジェが、⼟と⽊が織りなす空間を静かに演出している。
建築としては、地域に配慮された外観を持ち、⼩規模建築に適応した集成材を⽤いた構造と⾃然素材を利⽤した密度の⾼い内部空間を持つ稀有な建築である。⼩規模の⼯房が、3者の特徴を⽣かした共同設計というのも珍しく、意匠に優れた作品である。森⽥⽒は、この⼯房を次世代のアーティストに継承して継続的な利⽤を望んでいる。