鹿児島県004

三井串木野鉱山(株)・社長社宅

  • 1951年竣工
  • 設計/神岡鉱業
  • 施工/神岡鉱業
  • 構造形式/木造 地上1階 桟瓦葺
  • 用途/住居建築
  • 所在地/鹿児島県いちき串木野市三井

本住宅は、昭和24(1949)年、串木野鉱山の操業を再開するにあたり新築された社宅群のうち、最も上級の住宅にあたる社長社宅である。三井串木野鉱山(株)の資産台帳に資産化日付が,1951年9月30日とあり、本住宅の建設年代はこの時期と考えられる。
本住宅は木造平家建、切妻屋根、桟瓦葺で、玄関は妻部に設けられている。間口9間、奥行5間と大規模な住宅で、玄関脇に8畳の応接間を備え、8畳の座敷に6畳の続き間を並べているほか、トイレを二箇所設けるなど、住宅としての機能に加え半ば公的な接客の場としての機能も備えている。今日の住まい方としても、主寝室は最奥の6畳間に充てているようで、二間続きの座敷の公的性質は高いものと見られる。平面形式は中廊下式で、廊下北側には4.5畳の女中部屋、6畳の食堂、同じく6畳の広さの台所に風呂トイレ等の水回り、南側には先述の応接間8畳(洋間)、続き間の座敷(8畳、6畳)、および寝室(6畳)が配置されている。内装は真壁の漆喰仕上げで、座敷には本格的な座敷飾りを備えるほか長押を廻しており、簡素ながら風格のある意匠である。
2019年春に社長の交替があり、前社長の退去後、2020年1月時代では現社長は入居していない。そのため現在は主に社員と地域住民との交流会など、宴会場あるいはゲストハウス的な用途で使われている。建築物の状態、維持管理の状況ともに極めて良い。
戦後期の給与住宅として最も質の高い部類の住宅であり、間取りや意匠の特徴にも、その特性が良く反映されている。