鹿児島県007

カトリック平教会堂

  • 1955年竣工
  • 施工/信者の自力施工
  • 構造形式/コンクリートブロック造 地上1階 鉄板葺
  • 用途/教会堂
  • 所在地/鹿児島県奄美市笠利町平

奄美大島北部笠利地区の平集落に1955年に建設(献堂)された、鉄筋コンクリートブロック造の単廊式教会堂である。平集落でのカトリックの宣教の歴史は、19世紀のパリ外国人宣教会の時代、中村長八神父による宣教に遡り、古くから神父による巡回が行われていた。1952年にはグアム島に司教座を置き、1947年3月以降、米軍統治下の沖縄・奄美を管轄したカプチン会が、教会用地として中村金満氏所有の畑地3畝29步を購入、1955年1月26日に現在の教会堂が落成・献堂され、フェリクス教区長が祝別したとの記録が残る。
教会堂は単廊式であり、全体としては第二バチカン公会議以前の教会堂の形式、すなわち中央に廊下を持ち、左右に信徒席を配置する形式を保っている。ただし古写真と比較をすると、1)祭壇部は新しい形式に改変されている。2)竣工当初は存在していた聖体拝領台は撤去されている。3)床座形式から椅子式の信徒席に変更されている。以上の改変が行われたことが分かる。これらはその内容から第二バチカン公会議(1962-65)以後の改変であると考えられる。
構造は枠組コンクリートブロック造であり、外壁は界壁部をモルタル掃き付け仕上げ(ドイツ壁)とする。まぐさ部はペンキで塗装されており、信者により頻繁に塗り替えられている。小屋組はキングポストトラス造で、当初の小屋組を残しているが、垂木・野地板および屋根葺材は改変されているように見受けられる。平教会堂は、米軍統治下の奄美大島におけるブロック造のカトリック教会堂の典型例であり、維持管理をへて当初の状態を最も良く保っている事例である。同時期のブロック造の教会堂は沖縄にも事例があるため、歴史的展開を知る上で貴重な建築である。