鹿児島県008

伊仙町立鹿浦小学校一番棟

  • 1955年竣工
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造 地上1階
  • 用途/学校建築
  • 所在地/鹿児島県大島郡伊仙町大字阿三2206-5

奄美群島復興特別措置法(昭和29年)(奄美群島振興特別措置法・昭和39の前身)によって、奄美群島内で建設された一連の小学校建築の一つで、徳之島にあった9件の内の現存する2件の一つ。昭和29年建設のRC造(一部ブロック造)平屋建てで面積413㎡で全長が65.48メートルと長いが、東側1/3、20.3メートルは昭和34年の増築されたもので、本来は45.48メートル。
構造の基本はRCラーメン構造で、桁行10スパンを5部屋の教室として使用していた。現在は普通教室1のほか、図書室・多目的室・ランチルーム・音楽室に使用している。
教室の南側に屋内化した廊下を持つ特殊な形式を持っている。その祖形は、復帰前の米民政府工務交通局が作成した基本設計に準じたものと考えられる。奥行き6.6×幅9.45メートルの教室の南面に2.1メートルの屋外廊下を付け、南北に0.9メートルの庇を出すものであった。
現存する鹿浦小学校では、9.0×9.25メートルの教室に1.95メートルの屋内化した廊下を付けて繋ぐ基本寸法の計画を採用した。(庇は南0.7北0.9m)
民政府の示した基本設計では廊下がコロニアルな吹きさらしの屋外廊下であったものが現状はアルミサッシュを入れて屋内化した廊下になっている。この建具がいつから採用されたか定かでないが、この建築が建設される以前の古写真には、木造平屋の長い校舎が確認でき、その南面で腰壁上部の開口部には建具が見られない。米民政府の基本設計を木造で倣ったものと考えてよい。
さらに、現存する鉄筋コンクリート校舎を建設する際に採ったのが、従前に存在した木造校舎の構成を受け継ぐものであったと考えて間違いないであろう。そして現在の姿は、廊下南面の柱幅を残した全面(65m)にわたってアルミサッシュを新規に立て込んだ姿であると考えられる。
建築そのものは耐震診断にも耐え、目にとまる老朽化は見られない。末長く使用して伝えてゆくべき建築遺産であると考える。