鹿児島県012

旧智識邸

  • 1960年竣工
  • 設計/鶴田建築設計事務所(南さつま市)
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造および鉄筋コンクリートブロック造 地上2階
  • 用途/商業・事務所建築(元 住居建築)
  • 所在地/鹿児島県鹿児島市薬師一丁目

知識邸(現Sansa)は1960(昭和35)年に個人住宅として建設された建物である。鹿児島中央駅から北へ約700mのところにあり、敷地は北側と西側の2辺を街路に接している。構造は鉄筋コンクリート造2階建で、 3間四方の平面の四隅にある柱が2階の床スラブと屋根を支えている。2階外周部には片持ちのバルコニーをめぐらしており、2階屋根は東西方向に流れる緩勾配の切妻屋根となっている。
竣工当時の建物南面は、1・2階ともに柱間に木製のガラス引き戸を立て込んだ大きな開口部となっていた。現在、その1階部分は半間ほど外側に広縁が増築されているものの、木製建具と障子は竣工当時のまま残されている。その他の面の柱間はコンクリート製の有孔または無孔のブロックと木製のガラス引き戸で構成されている。ただし、東側は1階と2階ともに、のちに増築された部分がある。
玄関は1階北西角にあり1畳大の軒下空間が設けられている。玄関内に入ると正面に躯体持出し階段がつづき、2階東面の有孔ブロックからの採光が届いている。鉄製の手すりや踏面も竣工当時より変わっていないと思われる。階段下の扉を入ると、正方形の平面に付属して水回り(便所、浴室、洗面台)が竣工時から設えられており、この部分はブロック造となっている。2階は6畳、4畳半、2畳の3室からなり、前述したようにバルコニーが取り囲んでいる。
現在、知識邸は「シェアードスペース」となり、1階はカフェ、2階はアトリエとショップ(花、子供服と雑貨、写真スタジオ)が入居している。丁寧な改修を施された建物は竣工から60年を迎え、新たな使われ方を通じて親しまれる存在となっている。