鹿児島県013

鹿児島ビル

  • 1962年竣工
  • 設計/日建設計工務(現 日建設計)
  • 施工/戸田建設
  • 構造形式/鉄骨鉄筋コンクリート造 地上9階、地下1階、塔屋1階
  • 用途/商業・事務所建築
  • 所在地/鹿児島県鹿児島市名山町1-3

鹿児島ビルは、1962年(昭和37年)に竣工した建物で、鉄骨鉄筋コンクリート造(耐震壁付ラーメン構造)地下1階地上9階建て搭屋1階で、用途は貸事務所である。敷地の南面は城山のすそ野にある西郷銅像から桜島を望む錦江湾へ伸びる国道58号線に、西面は路面電車通りに接し、周囲に鹿児島の代表的な百貨店の山形屋や古典主義的建築様式の南日本銀行、アルミカーテンウォールの鹿児島銀行、ホテルなどが林立する中心市街地にある。建築年代の異なる特徴ある外部デザインの建築物群の一隅において、戦後県内において当時の建築技術を駆使した現代的な事務所建築の先駆けとして、市街地景観に溶け込んでいる。
設計は㈱日建設計、施工は戸田建設㈱で工事期間は12か月を要している。西面に玄関があり、これに繫がる屋内・屋外階段、エレベーター、トイレ、給湯室、物置などを建物北側にまとめて配置した片寄せコア型となっている。地下1階は管理事務所や設備関係室、1階及び2階は証券会社が入居する貸事務室、基準階の3階から8階は屋内階段等からつながる中廊下に面し、所有会社の事務室及び貸事務室、9階は大・中・小会議室となっている(7階のみ区分所有)。鹿児島県内で最初期の高度成長期の事務所建築で、コアは片寄タイプであり、長く鹿児島のビジネス拠点として利用されてきた。
道路側の南面及び西面は、柱面より持ち出した位置に二丁掛タイル張りの外壁とアルミサッシの連窓で構成され、水平の外壁と連窓がアクセントとなる外観を創り、道路に面する事務室等の室内からは連続的に市街地を望むことができ開放感がある。
基礎地業は直接地業のべた基礎。竣工後大規模な改造等はないが、これまでエレベーター等設備の更新など適宜適切な補修や改修がなされている。屋上の屋根はアスファルト防水・豆砂利洗出からシート防水に改修されているほか、内部仕上げは、玄関部分の二丁掛タイル張りの内壁を除く各階の廊下の天井・壁・床は適切に改修され美観を維持している。
平成12年1月に取りまとめられた耐震診断報告書によると、架構内の耐震壁、柱、梁、スラブ等の構造部材に劣化が見られず、また非構造部材や二丁掛タイル張りの外壁のひび割れ等の耐久性に関しても特に問題はなく、耐震判定指標を満足しているとされている。竣工後60年近くを経過しているが、県内の経済団体、会社支店、法律関係事務所等が入居しており、中心市街地におけるオフィス需要に対応している。