鹿児島県021

鹿児島県青少年研修センター

  • 1971年竣工
  • 設計/豊建築事務所、斗建築事務所、AOI美建
  • 施工/山岡建設、三恭建築、明進組、高倉建設
  • 構造形式/鉄筋コンクリート造 管理棟・研修棟・講堂:RC地上5階、延床:2,129㎡ 体育館:RC地上2階(屋根S造)、延床:1,015㎡
  • 用途/文化施設
  • 所在地/鹿児島県⿅児島市宮之浦4226-1

鹿児島県青少年研修センターは、鹿児島市街・錦江湾を正面に、桜島・大隅の山並みや開聞岳・金峰山・野間岳など南薩の秀峰を一望のうちに収められる標高約380mのなだらかな山裾に広がる台地に立地している。
起伏に富んだ約27万㎡の広大な敷地に、研修棟、宿泊棟、体育館、サービス棟などの建物や、キャンプ場、ウレタン舗装の200mトラック、芝生広場などの施設があり、各種の野外活動や創作活動、スポーツ、レクリエーションなどの活動ができる設備が整っている。自然に恵まれた環境の中で青少年などの利用者が様々な体験活動を通して、ふれあいや感動を広げていける研修施設である。
基本計画・基本設計は豊建築事務所である。実施設計には協力会社として斗建築事務所、AOI美建が参加している。
管理棟・研修棟・講堂の「人」という文字をイメージした斜め柱は、しっかりと大地に力を伝え、水平線を強調した建築を力強く支持する構造躯体が表現されている。そのデザインは、なだらかな周辺の山なみに馴染むように落ち着いた雰囲気を感じさせる。外壁は、建設当時コンクリート打放しであったが、途中でサイディングを上張りしている。室内は、所々の改修はあるものの、建設当時の仕上がそのまま残り、70年代初頭の建築技術や材料を今に伝えている。
コミュニケーション棟は四角錐の形をしており、山をイメージさせる。室内は、四角錐を支える登り梁が露出し、中央に吹抜が設けられ、一段下がったコミュニケーション室から見上げると四角錐の形をした天井が一望できる。
体育館は、一段低い土地に立地しており、2階からのアプローチとなっている。屋根は鉄骨逆梁を井の字で架け、ALC 板の屋根を吊る構造となっている。外部から剥き出しの鉄骨逆梁が見えるダイナミックな外観となっている。
サービス棟は、改修が所々あるものの、外観は建設当時の姿を残し、半地下ピロティーの外壁は自然石貼となっている。食堂室は改修が進んでいるが空間は当時の面影が残り、地下の浴室は現在使用されていないものの、当時のまま残っている。
宿泊棟は、室内改修はあるものの、外観デザインは建設当時のまま残っており、2棟がそのまま残存している。
東屋棟は、痛みが少々見えるが、建設当時のまま残存している。
鹿児島県青少年研修センターは、現在も多数の利用者が訪れ、庭・庭木を含め、施設の管理が行き届いているように見えた。もうすぐ築50周年を迎えるに当たり、今一度、意匠に優れた作品として、再評価されるべき建築である。